僕は今明日の仕事のために傘を磨いている。
血なんか一滴も染み付いていない。
団長と色違いの僕の宝物。


「どんな獲物がとれるかな?」

フェイタンに貰った毒を丹念に塗っていく。
神経系の毒。
弾丸にも最近いろいろ仕掛けている。


殺し屋だった頃にこれがあれば楽だったんだろうけどなぁ。

最初は情報屋になりたくて殺し屋になった。
そんなうちに何故か盗賊とまで言われるようになって


「人って、勝手な生き物だね」

「勝手だからこそ人なんだろ」


僕の呟きに返ってくる声、なんだ。
団長いたのか。
てっきり広間にいったのかと思ったよ。


「勝手だからこそ?」

「あぁ、個々の思いがあるから俺達は一つに纏まるんだ。点と点が人なら線は欲、だな」

団長は宙を眺めるように語る。
たまに哲学的なことをいうけど僕もなんとなく理解した。
確かに僕だって団長に会うために蜘蛛にいる。
そして団長のために人を殺す。


「もしも悪魔がいたら、どんな姿をしてると思う?」

「唐突だネ、そうだな。悪魔…か」

「理由もなく殺し、勝手に生かし、娯楽のために人の幸せを壊す。残虐な悪魔だ」

んー…、それはきっと


「人じゃないかな」

僕の答えに満足したのか団長は微笑む。
そしてしゅるしゅる手慣れた手付きで包帯を額に巻いていくのだ。


「そうさ、俺達は人の皮をかぶった悪魔だ。人のままでいれるのは子供の時だけだ」

「大人になるとみんな悪魔?」

「あぁ、でもお前は違う」

団長の瞳が僕を見つめる、まただ。
この闇に捕らえられると僕は全身の毛が逆立つような
血が渦巻くような錯覚に陥るんだ。


「お前は羽根をもがれ地上に堕とされた天使だ」

指先が僕の頬を撫でる。

おかしいな、
指先は冷たいのに、撫でられた頬はどうして火傷みたいに熱いんだ。



あぁ、団長。
今すぐにでも貴方を赤で消したいよ。

そうすればきっと、

僕は



抑えきれない衝動を消して
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