目が覚めると本を読んでいる団長と目が合った。

「起きたか」

「…うん」

あぁ、僕は団長の膝の上で眠ってしまったのか。
なんていう屈辱。

僕としたことが、なんで


「…どのくらい寝てた?」

「8時間くらいだ」

頭がくらりとする、そんなにも僕は眠りこけていたのか。

確かに帰ってきたのは深夜だったのにもう朝日が昇って昼じゃないか。


「起こせばよかったのに」

「最近寝てないんだろ」

「別に、もともと3日は寝なくても平気な身体だヨ」


本当はここ一週間寝ていない。
僕はいつの間にか寝れなくなってしまった。
団長に会ってから寝れると思ったけどもう寝ないのが癖になっているらしい。
寝たとしても仮眠程度、死なない、生活に支障がでないように無理矢理薬で眠る。


寝るのが怖い。

もしもまた違う世界にいたら。

もしもまた団長に会えなくなったら。

もしも、この記憶が消えて団長を忘れてしまったら。


僕は僕なのに僕ではなくなってしまう。


「寝るのが怖いのか」

その言葉に思わず肩が揺れた。
団長は相変わらず感情が読めない口調で問い掛ける。

「無自覚かもしれないが、寝ている間ずっと俺の服を握りしめていた」

あぁ、嫌なところを見られてしまった。
そんな癖、僕だって知らないヨ。


「そうだよ、寝るのが怖いから寝ないんだ」

だから今日は久しぶりに薬無しに寝た。

「…団長から言わせてもらうと団員が体調管理できないのは困るんだがな」

「生活に支障はないようにしてるよ、寝る時は薬を飲んでるしネ」

「そんな生活だといつか身体にガタがくるぞ」

「大丈夫だヨ、僕はヤワな普通の人間とは違うからね」


団長は顎に手を置いて何かを考える仕草をしたあと何か閃いたように薄く笑った。


「此処で寝ればいい」

「はぁ?」

「俺の部屋で寝ろ」


何を言っているんだこの男は。
僕は停止した思考回路を必死で叩き治す。

「寝言は寝ていってほしいな」

「ふざけて言ったわけでも下心があるわけでもない、お前は此処で寝るべきだ」

「なんでそうなるんだヨ」

「さっきはよく眠れただろう。それはお前が少しでも安心したからだ、だから俺の側にいろ」

なんてトンチンカンな理由だと思ったけど案外当てはまるかもしれない。

僕は昔から何か心配事や悩み事がある時は団長のベットに潜り込んでいたし。

まあその度に阿伏兎さんに朝怒られていたけど。


「…いいヨ。ここで寝る」

それでも寝れなかったら元の部屋に戻ればいい。

この日から僕と団長の不思議な共同生活が始まった。






子守唄はあなたの温もり
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