「ふぅん、異世界に?そんなこともあるんだネ。あ、これおかわり」

「おいおい感動の再会だってのに、まぁ、団長らしいや」


あれから阿伏兎さんも混じえて僕達は今までの話をしながら食事をしている。

懐かしい料理に僕は幸せすぎて死んでしまいそうだ。

何より団長がいる、これ以上の幸せなんてない。



「それで、向こうの”団長”さんは強いの?」

「たぶん」

「神夜とどっちが強い?」

「戦ったことがないからはっきりと言えないけどたぶん向こう」

「イイネ、面白そうじゃないか。俺もその世界に行ってみたいヨ」


阿伏兎さんが化け物かよと呟く中団長はとても楽しそうだ。
やっぱり強い奴と闘いたいのは夜兎の本能だネ。


「おい神夜、おめーさんこのままこっちに帰って来れんのか?」

「たぶん…無理だヨ」

「念ってのも面白そうだネ、神夜はできるの?」

「一通りは身に付けたヨ、僕は特質系」


そう言うと団長はとても楽しそうに微笑んだ。本当に根っからの戦闘主義者だ。


「じゃあ後で…って神夜、透けてるヨ」

「もう時間切れらしいネ、あぁ…もう、いや…でも団長に会えた…それだけで僕は幸せだヨ」

「また会えるヨ、また面白い話聞かせてネ」

ギュッと団長に抱き着いた。

消えたくない、このまま此処に残りたい。


団長が僕の頭を撫でた。

その温もりを感じながら僕は消えた。



*


「戻ったか、どうだった?久しぶりの”団長”は?」

向こうに行く前と同じように僕の目の前に”団長”が現れた。


「あぁ…、とても、とても幸せだったよ」

微笑むと涙が静かに頬を伝って床にシミを作った。
”団長”はその黒い瞳を揺らして驚いたように僕を眺めた。



「約束通り…蜘蛛に入るよ。今日からキミが僕の団長さ」

「ふっ…。そうだな、お前には0の数字を与える」


僕は床に膝をついて頭を下げた。
これは僕なりの服従の証だ。
団長以外の団長を団長と呼びその下について服従する。

僕はもうこうして生きていくと決めたんだ。

周りは驚いているのか少しざわざわとしてるが団長は気にすることなく僕の頭を撫でた。


不思議だネ、少し団長と似てるヨ。


もう触られて殺したいと思うことはないだろう。

だって団長はもう僕の団長になったのだから。


この世界では彼のために生きると決めたんだ。





僕の中の僕が眠りについた日
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