「まさかお前から会いに来るとは」


僕は戦意がないことを見せるために傘を足元に置いた。


「そう仕向けたんだろ?」

「お見通しってわけか」

「キミの望み、条件を言ってもらえるかな?」

「そうだな…お前の蜘蛛への入団だ」

「予想通りだネ」

「ではお前の望みは?」

「わかってるだろ?条件は飲む。団長に会わせろ」


ニヤリと笑って僕の頬をツツーッと撫でる”団長”

触られたところはまるで火傷をしたように熱を持つ。
ドクドクと心臓が煩い、目が熱くて溶けてしまいそうだヨ。


殺せ、殺せ、殺せ、殺せ。


僕の中の僕が叫ぶ。

右手はゴキゴキと音を立てて変形していくが今攻撃すれば何もかもお終いだ。


爪を立てて肉を抉る、感情を抑えるのは得意のはずなのになぁ。



「マテは出来るようになったみたいだな、良いだろう」

現れた本をパラリと片手で開くと僕の額に手を当てた。


「次目を覚ましたらお前は蜘蛛の一員だ、俺のことはちゃんと団長と呼べ」


そして僕はぬるま湯に沈む感覚を感じながら微睡みに呑まれていった。



誇りさえも捨ててみせる
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