此処に自分から来るなんてなぁ、あの時は想像も出来なかったヨ。


月光を浴びながら僕は傘を開く。

あぁ、今日も綺麗な満月だネ。


古びた廃墟の扉を開ける。


「やぁ、久しぶり」

開けた瞬間斬りかかってきたクソチビを傘で制しながらザッと中の人数を確認する。

4、5人か。

あ、マチもいるじゃないかラッキー。



「お前、何の用か。ワタシに殺されにきたか?」

「ご冗談。そこまで酔狂じゃないヨ。キミたちの”団長”に会いに来たんだ」

「簡単に通すと思たか?五体満足で団長には会えないね」

「キミがかい?」

「口だけは達者ね」


右足で刀ごとクソチビを蹴りあげて距離をとる、シュルリと包帯を外せばクソチビ意外なのか訝しげに僕を見た。



「何のつもりね」

「キミはやり辛いヨ、融通性がないからヒソカよりも…ネ」

「何の話か」


またも接近戦に持ち込む気なのか斬りかかってきたクソチビを見て片目を押さえる。


「満月に魅せられて【ルナティック】」


クソチビはダランと腕を垂らして刀を床に落とした。

最初からこうすればよかったネ。



「いったいフェイに何したのかな?」


金髪のお兄さんが僕の隣に立った。


「少し操らせてもらってるだけだヨ、でも僕はこいつを狂わせることもできるんだ。キミたちに害は与えないから”団長”を連れて来てくれるかい?」


クソチビよりこのお兄さんは賢い、眉なしのガラの悪いお兄さんが中に引っ込むとあいつが出てきた。



「来たか月兎、会いたかったよ」

「あぁ…、僕も会いたかったヨ」


黒い瞳が僕を写す。

ぞわりと体中の血が沸き立つのを抑え僕はへらりと笑った。



月の光にうつされた影
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