俺、気付く



とうとうこの仮宿ともおさばらか。
もうこの街に戻って来ることはねぇだろうな。
つまり
シュリに会うこともなくなんのか。


ーーーズキッ


心臓ら辺が微かに痛んだ。
ボーッとする頭にはシュリの笑顔しか浮かばねぇ。
もうあいつに会えない。

『フィンクスさん!』

もうあの花のような笑顔も、見ることはできない。


心臓が焼け付くように痛ぇ。

俺とシュリはただの客と定員だ。ズルズルと通い詰めてるだけで。

俺はなんで通いつめてたんだ?
シュリの笑顔が見たいから?
シュリに会いたいから?
どうしてシュリに会いてぇんだ?

ただの、女…なのに。

そうだ、ただの女だ。
今までみたいにすぐに忘れる

忘れる

『フィンクスさん!』


忘れ

忘れなれるわけがねぇ。
シュリは今までの女と違う、俺は

シュリが好きだ。

シュリがいなきゃ、ダメなんだ。


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