イルミだった。
見間違えるはずがない。
女といた、可愛らしい、女らしい、小動物のような。
腕を組んでいた。
「チッ…、だから何だってんだよ」
もともと親が勝手に決めた許婚だ。
恋人でもなんでもない。
それに俺は女としては生きないんだ。
「…クソッ…!」
スッキリしねぇ、シャワーでも浴びて気分かえるか。
スルリと髪紐を解いてキュッとコックを捻れば熱い湯が俺の体を撫でるように滴っていく。
曇った鏡を手で拭けば映るのは女の俺。
ぶっきらぼうで愛想のない顔。
グニッと頬を掴む。
ニィーッと笑って見ても気味が悪い。
…あの女は笑顔が可愛かったな。
「…違ぇだろうが…ッ!」
ダンッと鏡を叩けばパリンと鏡は割れて、手にいくつか破片が刺さり血がお湯と一緒に排水溝に飲まれていった。
この気持ちもいっそ排水溝に流れればいい。
適当に体を流すとロアは珍しく水を浴びずにシャワールームから女の姿のままで出た。
どうしてこんなに苦しい
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