あれからイルミは会うたび俺に抱き付いてくる、どこに逃げても現れて俺を捕まえる。
前までなら殴り飛ばしてでも逃げてたのに、イルミの、
イルミに「好き」って囁かれれば身動きがとれなくなる。
何なんだ、本当に。
あんな無表情人形。
モヤモヤした気持ちをどうしていいのか。
キルアはイルミの話は聞いてくれねぇし、ミルキはまだ謹慎中だし。
つーか、もう家に帰りてぇよ。
これも全部クソ親父のせいだ。
何で俺がこんな目に合わないといけねぇんだ。
ハァーーッと溜息をつけばいきなり目の前に顔が現れた。
「うわっ!!??」
驚きのあまり後ろに下がる、この日本人形みたいのは…確か、四男のカルト?
「ねぇ、何悩んでるの?」
「あ?」
「ここ、僕の部屋から丸見えなんだ。最近ずっとここに来るの知ってるよ」
カルトは真っ黒な瞳で俺をジィッと見つめる、やめてくれ。イルミにそっくりだ。
「何でもねぇよ…」
「ふぅん…僕はてっきりイルミ兄様の事だと思ってた」
「は、ぁ、?」
思わず出た変な声にカルトは笑みを浮かべる。こいつ、なんなんだ。
「つーかお前、話したの初めてだな」
「僕は基本お母様と一緒にいるから、ねぇ話逸らさないでよ。イルミ兄様の事で悩んでるんでしょ?」
「…ぁ、…まぁ、そうなる…ちゃぁ、あぁ」
「僕はね、イルミ兄様より素敵な人なんていないと思うんだよ」
ニッコリ笑ってカルトはそう囁いた。
「俺は男だ」
「女でしょ?本当は」
「おとこ」
「おんな」
何なんだこのガキは。
「俺がどうこう悩もうがお前には関係ねぇだろ」
「あるよ、僕お姉様が欲しいんだ」
カルトはキラキラした目で俺を見つめてくる、やめてくれ。
「ロアなら強いし大丈夫!」
何が大丈夫なんだ、やめてくれ。
本当に。
それから仕事までの三時間ほど俺はこの日本人形のような可愛らしい弟に捕まった。
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