「ロア」
「!っ」
あの日以来ロアに会っても彼女は俺を無視する、と言うか真っ赤になって走り去ってしまう。
部屋の鍵は相変わらず閉められたままだけど本当に警戒してるなら部屋を変えるか念か何かで俺を入れなくすることもできるはず。
だから本当に嫌われてはいないんだと思う。
わからない。
「ロア、待って」
「くんな!あっち行け!俺は仕事だ!」
「ロア」
「何だっ、よ」
ーーードボボボ
「あっちぃ!!」
振り向きざまにお湯をかければ俺の許婚はみるみるうちに可愛らしい姿になる。
「なんで逃げるの?」
「胸に手を当てて聞いてみろ変態!!」
ムニュンとロアの胸に手を置いたらバキッと殴られた。
「痛いじゃないか」
「誰が俺の胸って言ったんだよ!てめーの胸におけ!!!」
「何だ誘ってるのかと思って」
「なんでそんなポジティブなんだよ!!考えろよ!!」
叫びすぎて疲れたのかロアはぜぃっぜぃっと息を切らして悩みこむようにこめかみを押さえる。
「お仕置きしたこと怒ってるの?」
「ッ…、そう、だ」
「うん、あれはちょっと俺もやりすぎたかなって思ってる。ごめんね」
「なっ!そんな…、あっさりっ」
「でもロアのあんな顔と格好見て止めれるほうがおかしいと思う」
「何を開き直ってんだ!このドすけべ!!」
またパチーンの頭を叩かれた、ロアはもう真っ赤だ。謝ってるのに何を怒ってるんだろう?
「そんなに嫌だった?」
「…ぅ、え…?」
「俺のこと嫌いになった?」
ガシッと両手で肩を掴んで真っ直ぐ見つめる、ロアの瞳は深い青で綺麗だ。ずっと見てれば何だかうるうるしてきた。泣いてる?
「ロア?」
「別に、嫌いっとか、じゃ…なぃ…」
よかった嫌われてはないらしい。ロアはもう耳も首筋も真っ赤だ。なんだかこのまま押し倒したい気分。でもそんなことしたらまた喋ってくれなくなっちゃうしなぁ。
「ただ…その、あーいうのは」
「でも俺たち許婚だよ?」
「勝手に決めた許婚だろ!俺は」
「俺のこと嫌い?」
「いや、だからっ嫌いとかじゃなく…っ」
「あぁ、確かに順序を間違えたね」
「は?」
クイッと顎をあげて桃色の唇に優しくキスをする。
そうだ、まずキスからだったね。
「っ!、何しやがる!!!この変態野郎っっ!!!」
かわす暇もなくロアの右ストレートが俺に決まる、どうしてだろう?
「キスして欲しかったんじゃないの?」
「なんでそうなるんだよ!!変人!!」
殴られたとこを押さえながら、立ち去ろうとするロアを後ろから抱き締める。
「ロア、好きだよ」
そっと囁けばロアは何も抵抗せず大人しくなった。
何だ、これが正解だったのか。
難しいな、俺の許婚は。
でも面倒なんかじゃない、むしろ楽しい。
この感情はなんだろう?
すべてが愛おしい
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