喜んで虜に。



「おや

久し振りにアジトに来てその変わりぶりに男は思わず声を漏らした。


「いったい何があったんだろうねぇ


まぁきっとクロロが何かに影響されたのだろうと自己解決し、部屋に足を踏み入れた。


「げ」

「あ」


「やぁ、マチ


ニッコリと貼り付けた笑みを浮かべる男にマチは隠す事もせず嫌な表情をし呻いた。



「何しに来たんだい、とっとと帰りな、…ヒソカ」

「酷いじゃないか、久し振りに来たっていうのに


冷遇を受けているのに何故かヒソカは嬉しそうだ。


「ヒソカ、今はまずいよ」

パソコンを弄っていたシャルナークが少し顔を歪め、当たりを見回した。



「?」

マチの態度はいつもだがシャルナークがわざわざヒソカに警告するのは珍しい。

何か本当にあったのかと首を傾げていれば勢いよく広場の扉が開かれた。


「マチー!シャル!みて、みてー!」


少女が飛び込んできた。

年は5、6歳だろうか?
輝く白銀の髪に透き通るような白い肌、容姿は最上級だ。


しかしそれよりも目に付いたのは

揺れる白銀の尻尾と獣耳だった。




「あちゃー」

言葉を無くしたヒソカを見てシャルナークが頭を抱えた。


「わ、…ピエロ、さん…?」


アネモネはキョトリとヒソカを見て固まった。
つい最近読んだ絵本で見たピエロが目の前にいる。


アネモネの瞳はキラキラと輝いた。



「ピエロさんだー!」


すごいすごいと喜びながらアネモネはヒソカに抱き付いた。


「あ」

「げ!」




それを見たマチはいち早くアネモネをヒソカから引き剥がす。

「マチ?」

「なにやってんだい!知らない人にそんな事しちゃダメだろ!」

「マチそこじゃないよ」


混乱しているマチに的確なツッコミをいれたシャルナークはもう冷静を取り戻していた。


「知らない人じゃないよ、ピエロさんだよ」

プクッと不満げに頬を膨らますアネモネに思わず顔が緩みそうになるのを引き締める。


「そんなわけないだろ、コイツはただの変態だ!」

マチはビッとヒソカを指差し声を荒げる。


「………ピエロさんじゃ、ないの?」

「ボクはヒソカ奇術師だよ

「…きじゅつ、し…?ピエロさんじゃないの?」

「うん残念だけどボクは、」

「お花、出せないの?鳥さんも?」


じわり


白銀のキラキラ光る瞳に水滴が湧く。


それを見てマチとシャルナークは慌ててお菓子の準備をしようとしたが、


「もちろん出せるよ奇術師に不可能はないからね」


瞬間、取り出したトランプが花に変わりアネモネの頭上に降り注ぐ。

何枚かのトランプは鳥に変わりアジトから羽ばたいていった。


「わぁ、すごい!きじゅつしさんすごい!」

アネモネの表情は一気に明るくなり笑顔を見せた。

「ヒソカって呼んで欲しいなキミの名前は?」

ピョコピョコと動く獣耳がある頭を優しく撫でる。


「アネモネ!はじめまして、ヒソカ」


ヒソカが広場に入って来た団員達に飛び蹴りを喰らうまで後5秒。


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