今日は処刑する囚人の数が異様に多くて。処刑室は言葉通り血の海となった。あまりの数の多さに途中からは感覚が麻痺したように機械的に鎌を振り下ろしていった。だから気付いたら終わっていたような感じ。散らばる首の多さにぞっとした。それよりもこれだけの数を処刑した自分が一番怖かった。人を殺すことに慣れてしまった自分こそ殺されるべきなのではないだろうか。その日一日は本当に食欲が無くて何も口にはしなかった。食べたら吐いてしまう気がしたのだ。ずっとベッドに寝たきりの私をロウやゼニが心配して見に来てくれたけど大丈夫と言って仕事に戻ってもらった。独りに、なりたかった。日も暮れて星空が見え始めた頃、扉を叩く音が響いた。寝たきりで気だるい身体を起こして少しだけ扉を開けた。

「よ。なんか具合悪いんだって?」

そこに立っていたのは目が冴えるような金髪で。

「……大丈夫、だから」
「……ロウドフさん達から聞いたら何も食ってないって言うし。大丈夫な訳ないだろ。何かあったのか?」
「本当大丈夫だから……独りにして」
「……大丈夫に見えねえっつってんだろ」

カンシュコフの声には少しだけ怒りが混じっていた。カンシュコフは少しだけ開かれていた扉を無理やり開け、ショケイスキーの細い肩を掴んだ。

「……俺じゃ頼りない?」
「…っ、本当何でもないから離して」
「嫌だ」

ぎゅう、と掴まれた肩に力が込められる。伏し目がちにカンシュコフの顔を見上げると余りにも真剣な目をしていて。

「…………め、て」
「……?」
「……やめて……優し、くなんか、しな…で……」
「……ショケイ」

カンシュコフの手が肩から背中に回される。いつの間にか流れていた涙がカンシュコフの服に染みを作っていった。幼い子をあやす様に背中を撫でる手が暖かくて。

「…ごめん、泣かせて」
「……ぅ、…」
「……今日、処刑だったんだろ?」
「………ん」
「…お前は悪くないんだからな」
「違…、今日は…今日はね、いっぱい、殺し…」

次から次へと涙が溢れて上手く話せない。ずっとカンシュは背中を撫でてくれていて。ちゃんと話さなくちゃと思った。

「私、途中から何も感じなくなっ、…自分が、怖くて……」
「……うん」
「もう、分かんな…よ…どうして私が、生きてる、の…?……死にたい、よ……」
「…死にたいとか言うなよ」

またカンシュの声は怒っているように感じた。

「……な、んで」
「…凄え勝手なこと言うけど、お前が死んだら俺が嫌だから」
「…何それ」
「お前のこと好きだ」
「……ふ、ぇ?」

思わず変な声が出た。心臓が煩いほどに脈打って。唇に柔らかいものが当たった。カンシュの顔が凄く近くて。

「独りで背負わなくて良いから…辛いんだったら俺に言えよ」

混乱している頭にカンシュの声が響いてくる。カンシュコフは再びショケイスキーを抱き締め、ゆっくりと口を開いた。

「正直俺には何も出来ねえかもしれないけど、でも、お前の辛そうな顔とか見たくねえし…もうさ、俺の近くで誰かが苦しんでんの見たくないんだよ」

勝手だよな、と自嘲気味に彼は笑った。私はこんなにも誰かに想われたのは初めてで。嬉しくてまた涙が出た。

「……じゃあ、もう死にたいとか、言わないから…約束、して」
「…何」
「……ずっと、傍に…居て?」

カンシュコフは少しだけ驚いた顔をしてそれから優しく笑うと分かった、と言ってもう一度口付けた。


それは不安に震え、そしてまた温もりを探す
君に誓って。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
長い…;
こう、男前なカンシュを書きたかったんだと思う←




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