「ボリス!」 自分の名を呼ぶ声に夢から現実に引き戻される。反射的に飛び起きると顔に何かが当たり、その反動でまたベッドへと倒れ込む。そしてやっと自分は酷く汗をかいている事に気付いた。 「ボリス…超石頭…」 よろよろと床から這い上がって来たものはコプチェフだった。ああなるほど、つまりコイツにぶつけた訳だ。 「凄い魘されてたけど大丈夫なの?変な夢見た?」 「夢…」 確かに夢を見ていた。その事は覚えている。だがどんな内容だったのか思い出せない。事実だけが残ってそれまでの過程は全く抜け落ちてしまった。もどかしい様な感覚だけが残る。自分がこれ程までに汗をかくなんて一体どんな夢だったのだろう。 「…大丈夫だ」 「嘘。震えてる」 何が、とは言えなかった。コプチェフに掴まれた腕が寒がりの中に放り出された時の様に震えていた。自分が分からない。どうしたと言うのだろう。力を入れようとしても上手く入らなくて何故だかとても惨めな気持ちになった。 「水、持って来てあげるよ」 するりと離された手はぽとりとベッドに落ちて今だに震えていた。分からない。分からない自分が、怖い。 「コプ」 「ん?」 「いい」 「え?」 「要らねえから、」 「…分かった」 ボリスが何に怯え、何に悩み、何で苦しんでいるのかはどうやったって全てを知る事は不可能だ。ボリスだけじゃない他の人も皆。だからこの行為はあくまで気休めでしか成り得ない。でもそれで少しでもボリスが落ち着くのなら俺は精一杯の力でボリスを抱き締めていたいのだ。 蔕落ち (そして君は僕の中へ) (一つになる事が出来れば良いのかな) ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ ボリスは夜になると鬱になると言うかメンタルが弱くなると言うか コプにはボリスが弱っている事を敏感に気付いてあげて欲しい ← |