真っ白な雪が鉛色の空からふわりと落ちてくる。ぶるりと身体を震わせるとキレネンコさんが手を繋いでくれた。キレネンコさんの手は大きい。指を絡めてぎゅっと握るともっと強い力で握り返される。胸が熱くなって何かが溢れそう。 「暖かいです」 「…そうか」 「はい」 これが幸せなら僕は凄く凄く幸福者だ。だって好きな人が隣に居て笑って手を繋いで。これ以上何を求める必要が有る? 「どこに行きましょうか」 「…どこでも」 「……そうですね。二人だったら、」 じゃあ一人だったら? 「───……」 一人なら。どこにも行けない様な気がした。考えたくは無い未来。いつかこの手の温もりが無くなったその時、僕はきっと生きていけない。だから貴方が居なくなる時が僕が死ぬ時なんだろうな。誰かを好きになる事はこんなにも人を綺麗にさせてこんなにも人を脆くさせてしまうんだな、とか。ぐいっと身体が引き寄せられて僕のそれ程大きくない体はキレネンコさんの腕の中。でも手は繋いだままで。 「どうしたんですか?」 「……なんとなく」 「そうですか……キレネンコさん」 「何」 「暖かいです」 「…そうか」 身体の熱が胸の中心に集まって一気に込み上げてくる。意味も分からずにぼろぼろと涙が溢れた。キレネンコさん、僕怖いです。幸せ過ぎて、怖い、なあ。 「泣くな」 「………は、い……」 「…ガキ」 困ったように笑った顔が僕を捕えて離さない。一生分の幸せを使い果たすんじゃないかってくらいに今がとっても幸せなんです、キレネンコさん。どうしてこんなに涙が出るのかなあ、分からないや。今分かっていることは貴方の手が暖かいということだけ。いつか僕は幸せに絞め殺されるのだと思う。有り余る幸せに蝕まれて駄目になっちゃうんだ、きっと。 そんな僕になったとしてもこの手を離さないでいてくれる? 燃えるような恋情にそのうち私はただの液体に成り果てる (……当たり前の事を聞くな) ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 季節外れだけどそういう情景が浮かんだので文章に^^ 何これただのノロケ?← ← |