あの人はいつも一人で頑張る。私の手なんか借りなくても大丈夫。 「直りそう?」 屋根に登り作業をしているハンディーに声を掛けると彼は身を捩って下を覗き込んだ。 「おう。すぐ終わると思う」 「そ。ありがとう」 彼は笑って作業を再開した。雨漏りが酷くてハンディーに修理を頼んだのだけど何分屋根に登っての作業なので落ちないか心配だ。まあそんな作業数えきれないほど彼はこなしてきているだろうけど。でもやっぱり心配で見ているとこちらに気付いたようで。 「見てても面白くないぜ?」 「見ていたいの」 「…そっか」 きゅう、と胸が締め付けられるような。時々笑い掛けてくるハンディーに微笑み返す。また胸が痛くなった。かれこれ一時間は見ていただろうか。 「…っし。終わった」 倒れないように梯子を支えると「ありがとう」と言ってハンディーは屋根から降りてきた。 「お疲れ様」 「いえいえ」 「…お茶でも飲んで行く?」 「良いのか?」 「ええ」 「じゃ、お言葉に甘えて」 ハンディーをリビングに通し椅子に座ってもらう。ヘルメットを脱いだ頭は髪の毛がぺしゃんこになっていて小さく笑いが零れた。 「暑かったでしょう。タオル冷やしておいたの」 冷えたタオルでハンディーの汗を拭ってあげると「嫁さんみてぇ」と言われた。そんな冗談止してくれないかしら。真に受けてしまうから。 「飲み物は何が良い?」 「うーん…オレンジジュースある?」 「言うと思った」 透明のグラスにオレンジジュースを注ぐ。ストローも忘れちゃいけない。 「はいどうぞ」 「ありがと」 今日もハンディーはジュースを飲んで話をしたら帰ってしまうのだろう。私にはそれを引き止める権利も勇気もない。でもこの二人っきりの時間がずっと続けば良いと思う。それだけは一丁前に思う。気付いてくれれば良いのに鈍い人、なんて他人任せな考えだ。 「…ペチュ?」 不意に目が合って心臓が跳ねた。彼が私を見てる。それだけでもう嬉しくて恥ずかしくて顔が紅くなっていないかどうか。 「具合悪ぃの?」 「ううん、大丈夫。少し考え事」 「そ?」 その後は思った通り、話をして日が傾きかけて来る時刻になるとハンディーは帰ると言った。 「ジュースご馳走様」 「修理ご苦労様」 お互いに頭を下げるとなんだかおかしくて二人で笑い合った。 「じゃあまた何かあったら言ってくれな」 「ええ。お願いするわ」 バイバイ、と手を振って彼が見えなくなるまで見送った。見送った後になんだか寂しくなって気付いたら泣いていた。 「好き」と言えたらどんなにか楽だろう。 いとしいよりもかなしくて (心の中では何度だって言えるのに、ね) ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 大潔書いてみたかったんです テスト前ですって? 知りません← ← |