「じゃあまずはニンジンを切ろうか。細かく切るんだよ」 「う、うん」 私はフリッピーに料理を教えて貰っている。ギグルスやペチュニアがカドルスやハンディーに料理を作ってあげているのだと知って私も作ってあげようと思ったのだけど、生憎彼の方が料理が上手くて。拗ねた私にフリッピーが料理を教えてあげると言ってくれたのだった。それで週に一度、フリッピーの家で教えて貰っていると言う訳。食材の買い物から一緒にしていて、しかもお金は全部フリッピーが出してくれている…教えて貰っている方なのに申し訳無いと思う。「良いんだよ」って言ってくれたから甘えてしまっているけれど。 「……フリッピー、次は?」 「次はー…ピーマンかな」 「うんっ」 既に水洗いされたピーマンを手に取り包丁で刻んでいく。トントン、という音が台所に響いた。…それまでは何事も無く普通に楽しくしていたのだけど。 「……っ痛」 ぷつ、と人差し指から赤い液体が伝う。そんなに深くは切らなかったのだけど指先からの出血は中々止まらなくて。 「フレイキー大、丈、、……」 フリッピーは血を見た途端にみるみる顔色を変えて。しまった。直ぐに処置すれば良かった。段々と呼吸を激しくさせるフリッピーの瞳は興奮で金色になっていた。 「ぁ、ぁ、、血……血だ、…」 「フ、フリッピー。大丈夫、だから、落ち着いて?」 「ぅ、あ、あ、あああああ」 フリッピーは頭を抱えて座り込んでしまった。ああどうしようどうしよう。このままだとフリッピーは怖いフリッピーになってしまう。半ば混乱状態に陥った私はどうすれば良いのか分からなくてただひたすらにフリッピーを抱き締めた。胸の辺りにフリッピーの頭を押し付けてぎゅう、と力一杯抱き締めるとフリッピーはビクン、と肩を揺らして。 「フレ、…キー……」 「…大丈夫。大丈夫だよ……怖く、ないよ。フリッピー」 「フレ…フレイ、キー…」 フリッピーは小さな子供みたいに私にしがみついて離れなかった。背中を撫でるのに合わせて徐々に呼吸を整えていく。もう瞳は金色ではなくなっていた。 「……ごめんフレイキー」 「ううん。落ち着いた?」 「うん、…ありがとう」 そうは言ってもフリッピーは暫く離してはくれなかった。痛いほどに抱き締められて。不安とか怖いとか色んな感情が私にまで移りそうだった。その後落ち着いたフリッピーに絆創膏を貰って料理を再開したのだけれどフリッピーはずっと申し訳無さそうな顔をしていて。私も抱き締めてしまったと後から恥ずかしくなって。結局その日の料理の出来はよく憶えていない。 「……き、今日もありがとフリッピー」 「うん。……その、ごめんね今日は」 「ぅ、ゎ、私こそ、抱き締めたり、とか……ご、ごめん、ね」 「ううん、助かったよ……お陰でフレイキーのこと…その、殺さずに済んだから」 「…………うん」 「……あ、のさ。家まで送っていくよ」 「え?」 「暗いし…お詫びに、ね」 フリッピーはいつものカーキ色の上着を羽織って。右手を握られて私は帰路に着いた。 貴方を見てるとなんだか泣きたくなる その手はとても大きくて、小さかった。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 自転車漕いでたら思い付いたので ← |