目を瞑ると思い出す。十数年たった今でも暴力と凌辱の記憶が目蓋に浮かんで吐き気がする。

「…ぅ、、ぇ」

口の中が胃酸の臭いで充満して気持ち悪かった。ああ、気持ち悪い。トイレに胃の中のものを全部吐き出した。もともとそれほど溜まっているわけではないのだけど。水を流してうがいをして、少し落ち着くためにコーヒーを淹れた。時計を見ると夜中の三時半を指していた。熱い液体が咽を通る。やっぱりコプチェフみたいに美味しく淹れられない。小さく溜め息が洩れた。何だこれ、何で泣きそうなんだ俺は。肩が震える。弱い自分は嫌いだ。誰かに頼る自分が嫌だった。人間なんていつ裏切るかも分からないのに。そう、思うのに。自然に足はコプチェフの部屋へと向かっていた。ドアを開けようとノブに手を伸ばす。が、勝手にドアが開く。

「あ…ボリス」

扉の内側に立っていたのは紛れもなく彼で。

「お前…何で起きてるんだよ」
「んー?…何かボリスに呼ばれてる気がして目ぇ覚めた」
「…電波か」

何故だかとても嬉しくて。笑ってるのを見られたくなくて自分からコプチェフに抱きついた。安心する。気持ち悪さはとっくに引いていた。コプチェフは何も言わないで俺の頭を撫でていた。ガキみたいな扱いするなとか、にやにやするなとか、言いたいことは色々あるけど、まあどうでも良いか。そう思って目を瞑る。コプチェフの匂いと鼓動だけを感じる。あの記憶を思い出すことは微塵もなかった。ずっとこうしていたいと思うほどに温かい。

「いつもこんなに甘えてくれれば良いのになー」
「……うるせ」
「冗談だよー。…明日も早いしさ、寝よ?」
「……お前となら寝てやる」


まだ素直にはなれないけど。


さようなら眠れない日々
(どうしよう俺が眠れない…!!)

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ボリたんに吐かせたかっただけ←
結局コプは朝まで眠れなかったとかw




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