「あ、キレネンコさんお帰りなさい」
「…ああ」

パタパタと小走りで玄関に向かってくるプーにたった今終えてきた用事の疲れも吹き飛ぶようだった。全くマフィアの手伝いなんて大方ろくなことではない。キルはたまに仕事を手伝ってほしいと訪ねてくる。今住んでいるマンションの部屋を借りられたのはキルのお陰で。世話になってばかりなのも何だし本音を言うと面倒臭いが引き受ける。その度にプーが心配そうな顔をするのだけど。少し汚れてしまった上着を脱いでリビングのソファーに座ると二つのコーヒーカップを手にしたプーも同じ様に腰を下ろした。

「お疲れ様です」
「ん」

手渡されたコーヒーを一口流し込むと身体の芯から温まるようだった。は、と浅い溜め息を吐く。

「あ、そうだ。今日買い物に行ったらボリスさんと会ったんですよ!」
「ボリス…?」
「憶えてないですか?昔…って、もう一年半も経ったんですね。私達のこと追い掛けてたスナイパーさん」
「あー…」

そう言えばそんな奴も居てた気がする。殆んど忘れかけていたけど。

「で?」
「それで、ボリスさん結婚したって…もうびっくりですよね!」
「…へえ」
「でも良かったー、コプチェフさんと上手く行ったみたいで」

コプチェフ…運転していた奴か?そう言えばプーはボリスとか言う奴と二人で話し込んでいたことが度々あった。アレか。恋愛話をしてたわけか。女は本当にそう言う話好きだな。……それにしても結婚か。

「結婚式行きたかったなー。ボリスさん美人だからウエディング姿綺麗だったんだろうなー…うわあコプチェフさんってば幸福者!」

プーは楽しそうに話している。その様子を見てるだけで自分まで頬が弛んでくる…じゃなくて。……ずっと一緒にいるから考えたこともなかったけどプーはしたいのだろうか。結婚、とか。

「ボリスさんみたいな美人さんがお嫁さんなんて羨ましいですよね」
「俺は別に…」

お前が居れば良いなんて言葉にするのは少し恥ずかしかったから手を握った。彼女の小さめの手はすっぽりと覆うことが出来て。プーは一瞬驚いた顔をしてそれからまたいつもの笑顔で笑い掛けてくれた。全部。全部が愛しくて。その言葉は自然と口から零れた。

「……結婚」
「え?」
「…結婚、するか」

緑色の大きな目を見開いて。

「……良いんですか?」

なんて聞いてくるから。良いから言ってるのに。ぎゅっ、と手を握るとプーチンはみるみる内に瞳に涙を溜めて。えへへ、と笑って抱き着いてきた小さな身体を強く抱き締めた。


君となら、君とだけ、君のため
happy wedding.

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
不発←どーん
やっぱり書けなくなってる…今までも書けてた訳じゃないですけど
そしてさりげなく♀化←どどーん




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