「俺さ、…男に抱かれてたんだよ」 普段滅多に自分のことなんて話さないのに突然ボリスは話を切り出した。酒の力もあったのだと思う。カラン、と音を立ててグラスを傾ける白い手。ボリスはグラスに残っていた酒を全て飲み下し浅い溜め息を吐いた。俺はと言うと突然の告白に目を白黒させたままで。ボリスは自嘲気味に鼻で笑うと伏し目がちに口を開いた。 「…軽蔑する?」 そう問うた彼の手は震えていて。氷がまたカラン、と音を立てた。酷く虚しく部屋に響く。…何を言えば良いのだろう。言葉が見付からなくて。ボリスは俺の出方を待っているのだろう、俯いたままだ。元々小さめの彼が更に小さく見えて。堪えきれなくなって震える手に自分の手を重ねた。ぴたりと震えが止まる。何か、何か言わないと。 「……軽蔑なんかしないよ。って言うか寧ろそう言うこと教えてくれて、さ…ちょっと嬉しい。あ、嬉しいとか不謹慎かな?」 「………」 「…ボリスが話したくなったらで良い。辛かったこととか悲しかったこととか。全部ちゃんと聞くから」 「……、」 「……泣いても、良いから」 ゆっくりと顔を上げたボリスの目の縁には溢れるほどの涙が溜まっていて。瞬きをすると押し出された涙が白い頬を濡らした。 抱き着いてきた身体はやっぱり小さかった。 僕の親指姫、泣いていいよ (意外と、弱いんだよな) ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ ボリスは初めからこの事伝えてみようと思って酒に誘いました←作文 付き合い初めとかそんな辺りかな? ← |