「あ、阿部くん!」
「おー三橋、どうした?」


部活も終わり、部室で着替えていたときのこと。
後ろに、三橋の気配。
話しかけてくれたが、着替え中なのでそのままの状態で声をかける。


「おーい」
「…あ、あの」
「?」
「あの あ、う…」
「三橋?」
「え、と…うぅ」
「だから三橋どうし」


一向に話をしない三橋に痺れを切らした俺は、シャツに首を通してから後ろを振り向く。





その瞬間、時が止まったのかと思った。





「………!?」


状況を理解するのに、すげー時間を要した。(捕手のくせにとか言うな!)

俺の視界は、全部三橋で埋まっていて。
ついでに言うなら、唇もくっついている。
開いていた俺の口に、そのまま何かを三橋が突っ込んだんだ。
俗に言う、口移しで。


「……ふ」
「ちょっ…み、三橋…?」
「…」
「な、なんで…」


ヤバい、俺、尋常じゃなく動揺してる。
三橋は三橋で、耳まで真っ赤に染まってるし。


「…阿部、くん」
「……あ?」
「おいしい かな」
「え?」
「あげたの…おいしい?」


言われて慌てて口の中の物を噛むと、途端に広がるのは甘い香りと味。


「クッキー…か?」
「 うん、浜ちゃんに、教えてもらって、ね」
「三橋が、作ったのか」
「そう、だよ」
「なんで、急に…しかも、口移しなんだよ…」


だって普段の三橋からは考えられないことで。
あぁもう何がなんだかわかんねー。


「いつも…阿部くんに、ありがとうって気持ち いっぱいだから、その、お礼」
「は…?」
「形に残したかった、んだ …口移しは、泉くんがその方がいい、って」
「泉が…?」


ちらりと横を見れば、ニヤニヤと笑う泉。
うわ、最悪じゃねーか。


「あ、阿部く…」
「…」
「ご、ごめん、ねっ!」
「は!?ちょ、三橋お前どこに行っ…!」


パニック状態の俺をおいて三橋は部室の外へと走っていった。

残された俺はと言えば動きだせなかった。
唇を離された後も、その部分だけ熱を持っているようにジンジンしていて。


「お礼だってな〜」
「三橋ったら、大胆なんだから〜」
「!!」


聞こえた声で我に帰ると大変ニヤけた顔のヤツら。


「阿部、愛されてるね」
「顔真っ赤だぞ〜」
「っ…」
「追いかけねーの?」
「三橋が待ってるよ〜」


…クソ、こいつらぜってー面白がってやがるな。

三橋め、逃げやがって。
そりゃ…嬉しいんだけど恥ずかしいし、でも三橋はかわいいしあの顔とか反則だし、ってあぁもう俺何考えてんだ。
三橋が好きすぎてなんかいろいろ意味わかんねー!


「み、三橋!」


とりあえずこれ以上の羞恥プレイを避けるため、俺も部室の外に出ると、しゃがみこむ三橋を見つけた。





パニック・

(頭ん中がごちゃごちゃ)
(ただ、愛しい!)





なんかムカつくから、抱き締めてやった。


「あ、阿部く」
「嬉しい、すげー嬉しい、ありがとう三橋…」
「…うん」
「好き」
「好、き」
「…また、作ってな」
「うん…!」





―――――
三橋によって真っ赤になる阿部でしたが…、長いしなんというgdgd!←
らーぜもちょっとしか出ていない…
すみませーん!汗



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