※シリアス注意



「おかえり」


目の前に立つ人物にそう声をかけると、ひどく驚いた顔をしていた。
それから少し困ったように眉毛を下げて、


「ただいま、ツナ」


と、彼は笑った。


いつもなら、ただいま、と言いながら俺を抱き締めてくれる。
頭を撫でてくれる。
柔らかなキスをくれる。

だけど、今日はいつもとは違うから。
決して近付こうとしない。


「…ね、山本」
「んー?」
「ぎゅって、して?」
「…!」
「俺に、触れて?」


そう告げれば、ほら、また困ったように笑う。

きみは、やさしいから。


「ツナ、今は無理だから、ちょっと待ってな?」
「どうして?」
「どうして、って」


よごれてるから。


こびり付いた赤色。
鉄の匂い、火薬の匂い。
山本に浴びせられた、おびただしいほどの血。
その中に、山本の血が混ざっていないのを願うけど。

確かに、汚れてる。


「ほら、こんなままでツナに触れられないのな」


でも、汚れてなんかない。


「汚く、ないよ」
「いやでもな」
「汚くないよ!」
「!!」


俺は、自分に返り血がつくのも構わずに、山本に抱きついた。

力強く、強く、強く。
しっかりと抱き締めた。


「ツ、ツナ」
「…山本」
「汚れちまうから、な」


ぽんぽん、と遠慮がちに俺の背を撫でる手は、あの頃と変わらない、大きくて優しい手。

だけど、


「ほーらっ」
「…やだ」
「ツナ」
「離さないよ…」


あの頃と変わらないこの手を、今、汚してしまったのはこの俺だ。
同じ世界に連れてきてしまった、俺なんだ。

山本は、自分で選んだ、って言うけれど。


俺が山本と会わなければ。
俺が山本と友達にならなければ。

俺が山本を、好きになんてならなかったら。


「………ごめん、ね」
「なに?」
「…いっぱい、ごめん」
「謝ることなんか、なにもないだろ?」
「うん、ごめん」


諦めたのか、山本は笑いながら俺を抱き締めた。


「山本」
「ん」
「俺のこと、もっとぎゅって抱き締めて」
「いーよ」





れた手で抱き締めて

(汚したのは)
(他でもない俺だから)





ほんとうは、よごれてなんかいなかった。
きみは、だれよりもきれいでつよかったんだ。

だから、きみがきにするひつようなんて、ない。

たとえひょうめんはよごれても、どうか、きみのこころだけは、



―――――
お題のくるしめないで、の未来バージョン。
結局ついてきた山本にツナの懺悔、かな?汗
わたしは山本も汚れた自覚はあると思うんだ、気にしないけど←



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