「阿部、くん」
「ん?どうした」
「あ のね」
「?」
「手…ぎゅって、してもらっても、いい かな」
「手?」
「う、ん」
「いいよ、ほら」
ぎゅっと俺の手を握ってくれた阿部くんの手は、あったかかった。
俺の手とは正反対。
「…冷たっ、なにお前緊張してんのか?」
「ううん、寒い だけ」
「そう…じゃあ俺があっためてやるよ」
阿部くんはさらにぎゅーっと手に力を込めて笑った。
優しく、ふわふわ、柔らかに、あったかく。
「あったかい…」
「三橋が冷たすぎんだよ」
「そう、かな」
「そうだよ、冷たすぎ」
俺の近くで笑ってくれる阿部くんは、俺にはあったかすぎる。
阿部くんは俺にはもったいないんだ。
でも、離してほしくない。
阿部くんが好きなんだ。
阿部くんと、ずっとずっと一緒にいたいんだ。
だからお願い、
てばなさないで
(君に拒絶されたら)
(もう、前には進めない)
「阿部くん」
「ん?」
「…すき」
「…何、いきなり」
「言いたく なった」
「ふーん」
「…」
「俺だって好きだよ、…つかなんか照れる」
笑った顔が大好き。
だけど、それも、俺にはあたたかすぎる。
―――――
三橋は愛情を受けることに少し不慣れな気がする。
だから、阿部のあたたかさに戸惑うと思うんだ。