「はっないー!」
「うおあ!」


どん、と激しく強い衝撃が背中に広がる。
いったい何が、とも、いったい誰が、とも、言わなくたってわかる。


「田島…」
「なー花井!そのチョコ一個俺にくれよー!」


後ろから飛び付いて来たのだ、田島が。
俺の、食べ物目当てに。


「はーなーいー!」
「…だー、わかったって!やるから離れろ!」
「やったー!」


ったく…たかがチョコ一個でそんなにキラキラしやがって。

毎回毎回、抱き付かれる俺の身にもなってくれ。


「ほらチョコ」
「さんきゅー花井!じゃあ部活でなっ」
「おー」


チョコを受け取ると、笑顔でそのまま自分の教室へと戻って行く。

最近の田島はいつもだ。
昼休みになると、三橋を連れてお菓子をねだる。
断れない俺は、毎回、お菓子を学校に持ってくる。


「わー花井くん役得ー」
「…うっせー黙れ、お前の方が役得だろ、阿部」
「役得もなにも、俺らは付き合ってるし」
「…っ」
「…いつまで、そんなだらだらしてんだよ」


カタン、と音をたてて阿部が俺の前に座る。
それから、つん、と額を突かれた。


「いってー」
「んな眉間にシワ寄せるくらいならさっさと言っちまえばいいだろ」
「出来たら苦労しねーよ」
「ヘタレなんだもんね、キャプテンは」
「あーべー…」
「なに、事実だろ」
「ぐっ」


実際、阿部に言われたことは当たってると思う。
ヘタレ…とまではいかないと思うけど、な。

俺は、田島が好きだ。
たぶん、もう、ずっと。

気付いたら、キラキラした田島を目で追ってた。
ライバル、なのに。

きっと、食べ物にしか興味のない田島が俺のところに来てくれるのが嬉しい。
他でもない、俺。

だけど、


「あいつには、恋愛感情なんかないだろ…」
「わかんねーだろ」
「そもそも、俺もあいつも男なわけだし」
「…それは俺と三橋に対する挑戦か、あん?」
「チガイマス」
「嘘くせー」
「イイデスネ、ラブラブ」
「大丈夫だ、愛は性別をも越えてっから」
「…お前らは、誰から見ても想いあってっけど、俺らは違うだろ」
「…」
「田島に言ったとしても玉砕は目に見えてるし」
「…」
「その後気まずく…はならなくても、俺ずっと好きだろうし、キツい」
「……この、ヘタレ!」
「は!?」
「お前は、女か!!」
「…うっせ、ほっとけ!」


あーもう!女って!!
確かに最近自分でも女々しいなって思うけど!

しょうがねーだろ…。
どうしたらいいかなんてわかんねーんだ。
男を好きになったのも、田島が初めてだし。
嫌われたら、ヤなんだ。

でも、俺の心臓はかなり限界だったりして。
好きすぎて。
ホント、どうしたらいいかわかんねーよ。

阿部みたく、言う勇気なんかねーし。
でも、阿部と三橋みたく、こうイチャイチャ…してみたいとも思うわけで。


「女々しー」
「阿部は黙っとけ」
「ムッツリー」
「ちげーよ」
「ハゲー」
「坊主だっての」
「…マジで、悩みすぎてってハゲっぞ」
「ご忠告どーも」


誰か、助けてくれ!





嬉しい、苦しい、悲しい、しい

(胸が締め付けられる)
(全部全部、君のことが好きだから)





「(好きでもないやつに、毎日会いに来ないと思うけどな)」
「(た、じ、まー…)」
「ねーねー、二人ともなんの話してんの?」
「クソレには教えね」
「ちょっ、阿部ひど!ね、花井なんの話?」
「…」
「え、無視!?」
「…」
「あーべー…」
「引っ付くなクソレ」



―――――
なんとなく乙女思考な花井でよろしく(∵)笑
田島は、好き、かな?
ご想像にお任せします←



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