「ごめん」


嫌だ、嫌だ嫌だ、嫌だよ。
こんなの、嫌だよ。

行かないで。
独りにしないで。

俺のこと、嫌いにならないでよ………阿部くん。





「……っ!」


ハッと自分の息が詰まる音で意識が覚醒する。
真夜中の静寂に、俺の心音が響いている。

よかった、夢、だ…。

だってほら、阿部くんは俺の目の前にいる。
気持ちよさそうな寝息。

大丈夫、阿部くんは、俺のそばにいる。
…離れてなんか、いない。

伝わる阿部くんの体温が、俺を落ち着かせる。


「…」


阿部くんを起こさないように、そっと抱きつく。


わかってるよ。
いつかはきっと、俺たちは離ればなれ。

許されない俺たちには、時間なんて限られてる。
夢のように、阿部くんとさよならするのは、遠くない未来かもしれない。

だから今この一瞬を、大切に、生きて。


「……あ」


生きて、


「っ、う…」


…生きて、どうなる?
終わりが来たら、そこでさよなら、なのに。

気付いたら零れた涙。

泣いてばかりで、俺はどうするんだ。
本当にさよならするときにこれじゃ、阿部くんを困らせるだけだ。


「好きだよ、阿部、く」
「…」
「…好、き」


ぎゅっとしがみついたシャツに、涙のあとが残る。

ただ阿部くんが好きだ。
その感情だけが俺を支配している。

いつかなんて、来なければいいのに。


「………ん」
「…!」
「みは、し…?」
「阿部く…」


俺のせいで、起きてしまったのだろうか。
目の前の阿部くんは、重そうに瞼を開いた。


「なに、ないてんだよ」
「泣いて、ない よ」
「うそ、つけ」
「…っ」
「なんだよ…こわいゆめでも、みたのか」
「う ん」
「こわくないぞ」
「う、んっ…」
「おれが、いるから」
「!」


そう言って、阿部くんが俺をぎゅっと抱き締めた。
と思ったら、また規則正しい寝息が聞こえた。


「(寝ぼけてた、のか)」


どうやら、寝ぼけて俺に話しかけていたらしい。

思わず笑みが浮かんだ。
…かわいい、なぁ。

阿部くんのおかげでいつのまにか止まった涙。


先なんて見えないけど、阿部くんは今ここにいる。

きっと、大丈夫。





一寸先は、

(それでもただ愛しい)
(そばにある温もりは、俺を導いてゆく)





いつか、なんて、結局はいつか、なんだから。

俺は、阿部くんが好き。

今は、それで、いいんだ。



―――――
…なにがしたかったのかいったい(`・ω・´)←
夢見が悪いと嫌です、って言いたかったのですよ←
よく金縛りにあいます←



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -