俺って、やっぱりダメツナで、臆病で、ずるい。

そんなことを、ずっと、ずっと考えていた。


「山本くん!」


聞こえてきた言葉に思わずびくっと肩が竦んだ。

…声が聞こえた方向に目をやると、そこには当然“山本”がいた。


「ねぇねぇ山本くん」
「山本ー!」
「なぁ山本ってさ」


みんなの人気者で、野球が上手で、優しくて、俺と一緒にいてくれる。
山本武。
俺の友達で、好きな人。

…好きな、人。
俺は男でもちろん山本だって男だ。
それなのに、


「(いつのまにか、好きになってたんだ)」


自分には無いものを持つ彼に、ただ憧れていた。
はず、だった。

けど気付いたんだ。

たとえば今だって、山本の隣に当たり前のように立つ女子が羨ましくて。
触れることを許されるのが羨ましくて。
女に生まれればよかった、だなんて、思ってしまった自分がいて。

その時、俺は、気付いてしまったんだ。
この感情が何なのか。


「十代目?」
「…え?」
「どうしたんですか、ぼーっとして」
「あ、ごめん…」


ハッと気が付くと、目の前の獄寺くんが心配そうに俺を見ていた。
何でもないよ、と笑った。
のに、どうやら納得していないようだった。

獄寺くんは、きっと、わかってる。
俺の、気持ち。


「…野球バカ、呼んできましょうか」
「…いいよ、話すこと、特にないから、さ」


好きなんだ、好きなんだ。
どうしようもないんだ。
抑えられないんだ、君が好きだって感情が。

ごめん、ごめんね。
友達なのに。
大事な、友達だったのに。


「………!」


もう一度、山本の方を見ると、山本と目があった。
山本は一瞬きょとんとしてから、俺の大好きな笑顔を見せた。


「(うわ…)」


心臓が、ぐわっと鷲掴みにされたみたい。
痛い、苦しい、悲しい。
こんなに好きなのに、どうして、どうして。

パッと目を反らして、俺は机に突っ伏した。


「じゅ、十代目…?」
「…」
「どうかしましたか!?」
「…お腹が、痛いんだ」
「なっ!?ほ、保健室に行きましょう、今すぐ!」
「…うん、そうだね」


心配してくれる獄寺くん。
ごめんね、嘘をついた。
これ以上ここで、苦しい想いはしたくないんだ。

それに、


「…ツナ?」





お腹が

(心配して駆け寄る君)
(なんてずるい俺)





わかってた。
こうやって獄寺くんが心配していれば、きっと、


「ツナ、具合わりーの?」
「…うん」
「大丈夫か?」
「…」
「保健室、行こーぜ」
「…うん」


山本は、優しいから。
誰にでも、優しいから。

だから、きっと、来てくれるってわかってたんだ。

呼ばないって言っておいて、結局呼んでる。
ずるいな、俺。



―――――
こう、ね、山←ツナで!
女の子に嫉妬しちゃうツナが書きたくてね(゚ノ゚)



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