阿部くんは誰を見てるの?


「は?なんて…」
「阿部 くんは、誰を 見てる、の、かな」
「…何言ってんだよ」
「阿部くん、すごく 悲しい顔、してたよ」
「っ、…してねぇよ」


そう言って、阿部くんは顔を反らす。
いつも、そうだ。

俺が二人で一緒に、ブルペンで投げていても。
練習中でも。
ふとした瞬間に、阿部くんはどこか遠くを見てる。

…俺は、知ってるんだ。
阿部くんはいつも、同じ人を見てる。
俺がきっと届かない、あの人のことを。


「聞き方変える、ね」
「…あ?」
「今…何、考えてた?」
「………別に」
「考えてない、わけは、ない…でしょ?」
「…」


ごめんね、阿部くん。
ホントは俺、何を考えてたかなんて、わかってる。

わかってて、聞いてる。

阿部くんが、あの人のことを想わない日が来るんじゃないかって。
そう、思っちゃうから。


「阿部くんが、悲しそうなの、俺 嫌だ、よ」
「…」
「阿部くんには、笑って ほしい、よ」
「…」
「俺、阿部くんと一緒に、野球するの 好きだよ」
「…俺も好きだよ」
「…」
「わりーな三橋」


ほら、また。
俺の嫌いな顔で笑う。

あの人のことを想って、悲しそうに、笑う。


「ちょっと…考えごとしてただけだから」
「…」
「次の試合の配球どーすっかな、とか、そんなの」
「配、球…」
「悲しそうに見えたのは、気のせいだし気にすんな」
「…う、ん」
「おし、片付けっか」


阿部くんは、その後いつもどおりに戻るけど。

また、悲しい目で、あの人を想って、考えて。
あの人を見てるんだ。

それからまた、俺に嘘を吐くんだ。





そんなならいらない

(悲しい嘘なんて)
(いっそ、ホントのことを言ってほしかった)





阿部くん。
いつか俺を見てくれる?
やっぱり、榛名さんを越えなきゃ、見てくれない?

こんなにも、俺は。
阿部くんが好きなのに。



―――――
…あれ?ミハベ…?汗
精神的に三橋が強気だとミハベちっくに…
ハルアベ…というかモトタカ風味でした



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