風呂から上がって、自分の部屋に戻ると、タイミングよく携帯が鳴った。


「――もしもし?」
『あ、もしもし山本?』
「はは、俺以外の誰だよ」
『えへへ、そうだよね』


ツナからの、電話。
それは定期的にくる、俺のための電話。

俺が部活とかで、一緒に帰れなかったときにくる。
その日の帰りなにがあっただ、チビ達がどうだの。
そんな、どうしようもないほどくだらない話。

だけどツナが、(自惚れかもしれないけど)俺と話がしたくてする電話。

嬉しくて愛しくて、しょうがない。


『今日帰り道に獄寺くんがビアンキに会っちゃって』
「はは!マジで」
『倒れちやったんだよ』
「うわー、大変だったろ、運んだりすんの」
『そうなんだよ!山本いないから運ぶ人いなくて』
「はははっ」
『それにね!』


この時間がすごく幸せ。
だって後は寝るだけだし、最後に話すのがツナだ。

ツナの最後は俺だ。
なんか優越感だよなー。


『ちょっと、山本…ちゃんと聞いてるの?』
「聞いてるってー」


声しか聞けない、けど、それでもじゅーぶん。


『もうホント、俺、困っちゃって…』
「俺が部活やってる間になにしてんだよー」
『うん、だから今度…』
「今度?」
『山本も、一緒に行こ?』
「おー」
『へへ…次はいつ一緒に、帰れる…かな……』
「………ツナ?」


だんだんと、ツナの声が小さくなっていく。
これは…。


『たの、しみ…だな…』
「ツーナっ」
『……………すー』


耳元からは、規則正しい寝息が聞こえてきた。

あー、寝ちまった。
よっぽど疲れたてたのか。

極稀に、ツナは電話したまま寝てしまうことがある。
寝息が聞こえてきて、まぁそれはそれでかわいいんだけどさ。

…ちょっぴり、残念。

だけど、


「…おやすみ、ツナ」


ちゅ、とリップ音をたててから電話を切る。
枕元に携帯をおいて、布団をかぶる。

残念だけど、ツナが眠ってしまった夜は、次の日、焦ったように朝電話してくるツナの声で起きられる。

それって、二倍嬉しい。





途切れた

(君の声を聞いて寝る)
(君の声を聞いて起きるという幸せ)





焦るんだろーなー…。

ツナの様子を想像して、思わず笑みがこぼれた。



―――――
え、なんだこれ(゚Д゚)
…甘いのを目指したんだと思います←あは



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