やっぱり、山本…くんは、入院してるのかな。
服がそれっぽいし、きっとそうなんだろうな…。


「なぁなぁ」


なんの病気なんだろう。
もう長いこと入院してたりするのかな…。
でも元気だよな。


「ツナー?」


こーゆーのって、聞いたらやっぱり失礼…。

でもさっき、よろしくって言ってたし。…友達になったんだよ、ね?
聞いてもいいのかな。


「ツナってば!」
「うわっ!?」


わっ!と耳元で叫ばれて、思わず変な声が出た。


「え…な、なんですか」
「さっきからツナのこと呼んでたんだぜー」
「嘘っ、…ごめんなさい」
「ま、いーけどなっ!」
「…山本、くん」
「呼び捨てでいいって、つーか敬語もなしなのな」
「でも」
「いいの」
「…じゃあ、山、本」
「んー…まぁとりあえずはそれでいっかな」


な、と言い笑っていた。
さっきからなんなんだ…!
この余裕な感じは。

…いや、俺になんか余裕がないのか。
俺こそなんなんだ…。


「なーツナいくつ?」
「俺は、14」
「あ、一緒なのな」
「一緒なの!?」
「そうだぜー、なんで?」
「だ、だって俺より背がすごく大きい、よ?」
「ツナがちっこいの」
「ううっ!」
「あ、もしかしてコンプレックスだったりする?」
「…ちょっと」
「ははっ、大丈夫だって!これからこれから」
「だといーけど」
「拗ねんなってー」


…よく、笑う人だな。
さっきからずっと笑いっぱなしな気がする。
今だって、ははは、と声を上げて笑っている。

最初に会ったときに驚いたのを少し見たくらいだ。
それ以外は、楽しそうに笑ってる。

さっき少し悲しそうに見えたのが嘘みたいだ。


「よく、笑うね」
「俺?」
「ん、ずっと笑ってるよ、俺が転んだとき以外」
「そうかー?」


疑問符を打ちながらも、顔はにこにこのまま。
何がそんなに楽しいの。

慌ててた顔、もうあんまり覚えてないよ。


「…ね、なんであのとき、あんなに驚いてたの?」


…ずっと気になってた。

ただ、笑っただけで。
どうしてあんなにも、驚いて慌ててたんだろう。


「あー…」
「?」
「…ツナが、俺に気付いてくれたから、かな」
「…は?」


気付いた、って、


「普通じゃないの?」
「んー、まぁ、な」
「目が合ったなら、気付くでしょ?」
「そーだけど」


そう言いながら、山本はどこか困ったように笑った。

困ってても笑うんだ。
ホント、不思議。


「…この話、おしまい!」
「え」
「気にすんなってこと」
「えぇー…」


パンッ!と山本が手を叩いて、ニカッと笑う。


「俺のことはいいのな!俺はツナのこと知りたい」
「お、俺?」
「そー!何が好き、とか普段のこと聞きたいのな」
「俺の好きなものー…?うーんなんだろー」


それから、俺たちはずっと話をしていた。
時間が経つのも忘れるくらいに。
お互いの趣味とか、俺の愚痴を聞いてもらったりもした。

学校での俺はダメツナだから、みんなそういうふうに俺に接してくるから。
普通に笑って話してくれる山本が、すごく、すごく嬉しかった。

もっと、山本と話していたいって思ったんだ。


「ツナってドジだろー」
「な、なんで!」
「転んでたし」
「…」
「ははっ、図星〜」
「うるさいっ!」
「顔真っ赤なのな、ツナかーわいー」
「かわいくな「君」


…突然聞こえてきた声に俺たちは遮断された。


「こんなところで、いったい何してるんだい?」
「え…」


聞こえてきた声は、病院のお医者さんのものだった。
不思議そうな顔で。

そりゃ、そうか。
この雨の中、外で話をしていたわけだし。


「風邪をひいてしまいますよ、入りなさい」
「あ…はい」


山本に中に入ろうと言おうと、俺が振り向くと、





「ツナ、またな」





その言葉だけが俺の耳に残り、そこにはもう、山本はいなかった。


「山本…?」


山本、どこに行ったの。



―――――
ツナがドジっ子なら、山本は不思議っ子です←



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