…雨、すごいなぁ。
外を見れば、どしゃぶり。
空が暗い。
帰り、大変だなぁ…。
って、今はそんなことはどうでもいい!
「母さんのばか、倒れるとか…俺、すっごい心配したんだからね!」
「大丈夫よー。お医者さまも過労って。」
「過労って…!病院に運ばれて何言ってんの!」
母さんが、倒れた。
母さんの言うとおり過労によるものだった。
大事をとってしばらくは入院しなきゃいけない。
「ツッくんは心配性ねー」
「っ、心配しないわけないだろ!?」
「あらあら」
「母さんが、いなくなるかと、思ったんだから…」
「ツッくん…」
「…とにかく!ちゃんと休んで、元気になってよね」
「はいはい」
大切な人がいなくなるなんて、絶対に、嫌だ。
小さい頃、大好きだったおばさんが死んだときにそう思った。
母さんや、父さん。
いなくなったら、もう会えなくなったら、なんて。
考えただけで怖かった。
だから、“死”って嫌だ。
「俺、家に帰って必要なもの持ってくるけど、なにかほしいものある?」
「特にないわ」
「そう、…ちゃんと安静にして休んでてね!」
「ふふ、わかりました」
「じゃあ行ってくる」
そう言って、病室のドアをぱたんと閉めた。
ホント…よかった。
退院いつになるのかな。俺迎えに行かなきゃ…。
っていうか、父さんは何してんだよ!まったく…。
ってか明日からご飯どうしよう…!
父さんが作るわけないし、俺が…は無理だよなぁ。
病室を出た俺は、歩きながら、そんなことをずっと考えていた。
これがいけなかった。
「あ、え?う、わっ!」
ぼーっとしていた俺は、歩く人にぶつかりかけ、気付いてそれを回避しようとして、見事に、
「(…こ、こけた)」
しかも綺麗に顔からだ。
びたーん、とすごくいい音もした。(病院って静かだから響くわけで)
顔に熱が集まる。
あー、もう最悪だ。
なんかクスクス笑ってる声も聞こえるし。
みんなが笑っている気がしてならない。
顔、上げられない。
誰かと目あって笑われたら嫌だし。
でも、この状況に耐えられるわけでもない。
…早く、行こう!
そう思って、潔く顔を上げた、その刹那、
「(入院、してる子?)」
俺の視線は、奪われた。
ずっと、見ていたのだろうか、わからないけど。
一人の少年と目が合った。
じっと見つめられ、目が、離せなくて。
…は、恥ずかしいな。
そんなに俺がこけたの面白かったのかな…。
俺は、恥ずかしさや何やらで、この場から一刻も早く逃げ出したかった。
けど、一向に目を反らしてくれる気配はない。
とりあえず、笑っとけば、いい…かな。
にこ、とその少年に微笑みかけてみる。
すると彼は、びっくりしたように目を見開いた。
え、俺、なんか変なことしちゃったのかな。
彼はうろたえたように慌てだして、それから、ふいっと視線を外した。
あ…視線反らしてくれた。
うん、帰ろう。
ぱっぱっと自分についた汚れを払って立ち上がる。
周りの人たちの興味も、俺から逸れたみたい。
病院を出る前に、一度振り返ったけれど、そこに彼はもういなかった。
…変な子、だったなぁ。
―――――
始まってしまった…
死んだおばさん捏造←
ツナはどじっこです
…これ、どうなるかな