その日はいつもと変わらない、はずだった。
「ツナ」
「…、っ」
泣いていたんだ、俺。
気付かないうちに。
山本と、いつもと変わらないように歩いてたのに。
山本と、手を繋いで。
俺の家に着いたから、明日学校でって、別れようとしたのに。
「ツナ」
「…ふ、ぇ」
手からぬくもりが離れた瞬間、俺は、泣いていた。
「ほら、ツナ、泣けって」
「や、だ…っ」
「我慢すんなって」
なんとか堪えようとして、唇を噛み締めた。
なのに、山本が、
「泣きたいときは、泣くのが一番いいのな」
「…!う、ぁっ」
俺のこと抱き締めるから。
俺の大好きなぬくもりでぎゅっと抱き締めるから。
涙は、止められなくて。
外だとか、そんなの関係なしに、俺はただただ山本に縋りついた。
「やま、もと」
「ん」
「やまもと、やまもとっ…やまもっ…とぉ…!」
「大丈夫だいじょーぶ」
「うわあぁっ…」
ぽんぽんと、子供をあやすように背中を叩かれて。
それから、優しく頭も撫でられて。
子供扱いしないでって言いたいけど、それが心地いいから、言えないんだけど。
「…ふ、ぅ」
「落ち着いた?」
「う、ん。ごめんね、やま、もと…俺……その」
「いいって」
しばらくして、やっと涙が止まった頃には自分の状態に恥ずかしさを覚えた。
「や、山本?」
「んー?」
「あの、は、離して?」
「まだだめ」
「え、ぇ…?」
「ぎゅー」
「わ、や…山本…!」
「なぁツナ」
やっと離してもらえたかと思うと、山本は、真剣な顔をして立っていた。
「ツナ」
「な、に?」
「だいじょーぶ」
「…」
山本の口から紡がれた言葉は、俺の耳にしっかりと、確実に残って。
その言葉に、ひどく安心して、また涙が零れた。
山本が大丈夫って言うと、そう思えるのは、いったいなんでだろ。
大丈夫、
(俺はそばにいる)
(離れたりはしねーから)
―――――
超直感でなにかを感じたツナということに。
好きな人に何かあったらと思うと泣きたくなります