紙箱の中に入っていたのは、上下ともにコーデされた服だった。
巴曰わく、これもちょっとお高い服だという。
感想としては、一体どこからそんなお金が出てくるのだというものだった。靴にブレスレット、それに服。祐喜としてはどうも着るより着られている感がして仕方ない。
しかし、決して悪い気はしなかった。
――土曜日。
朝から目覚ましが壊れるといういつも通りのトラブルに見舞われ、祐喜は寝ぼけた目で時間を確認するなり飛び起きた。
今日は三人との約束があるというのに、大遅刻だ。しかも、どうやら咲羽たちは先に行ってしまったらしい。……何故だ。
焦りつつも例の服を取り出し、それに着替える。部屋を出るところでブレスレットのことに気づき、机に置いていた木箱をポケットに入れて、あの靴を履いて寮を飛び出した。
元からそう運動が得意なわけではない。校門についたときには、情けないことに息も絶え絶えという有り様だった。
「ごっ、ごめん。大遅刻……」
待ち合わせて初めに出るのが謝罪というのは、もはやお決まりになりつつある。
「良いって良いって。まーた目覚まし壊れたんだろ」
壁にもたれかかっていた咲羽が笑う。
「そ、ソノトオリデス……ほんと、ごめん」
「しゃーないって。それより早く行こーぜ雪代、桜子オススメのスイーツがなくなる」
「はいっ。では祐喜様、行きましょう!」
「うん」
言って差し出す、雪代の手を取りかけて気づいた。
「あ、ちょっと待って」
ポケットに入れていた木箱。そこからブレスレットを取り出す。
「忘れるところだった」
できるだけ慎重な手つきでそれをつける。木箱の方も壊れないよう、ポケットから鞄へと移し替えた。
咲羽くらいは何か言ってくると思っていたのだが、ある程度の予想通り彼らの反応はまったくの無言だった。
やっぱりそうだ。それを見て、祐喜は確信を持つ。
やっぱりこの三人だった。
「じゃ、行こっか!」
その事実がどうにも嬉しくて、祐喜は心からの笑顔でそう言った。
走る祐喜と雪代、続く犬の背中をゆっくりと追う。
今はまだ言えない。直接言う勇気がない。けれど。
できれば次は、盛大にお祝いがしたい。
そう思ったのは多分、自分だけではない。
「咲羽ー?」
「ああ、いま行く!」
いつの間にか立ち止まっていた咲羽を祐喜が呼ぶ。こちらを振り向いた彼に、咲羽はハッピーバースデー、と呟いた。
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