わたしは泣きそうになっていた。最後の最後まで足掻いてみようと思っていた。だけどだめだって。ねえ、坂田くん。わたしはどうすればいい?ねえ、誰か答えて、教えて、


坂田くんとわたし。


記念受験みたいなものだった。絶対受からないと思ってた。受験が終わって、なんだかんだで最後の方は坂田くんもわたしも出禁とゆう事で、勉強だけに必死になったわけで。
昔から数学は得意だった。わたしの夢は、先生になることだった。

「柄にもなくね、先生になりたいの」

笑われるかな、と思って覚悟して言ったんだけれど、坂田くんは優しい笑顔でお前ならぜってーなれるよ、と頭を撫でてくれた。昼休み。青空の下。屋上。きみは優しくキスをしてくれたね。

記念受験のつもりだったんです。絶対落ちるつもりだったから家政大とかいって、東京でこのまま勉強しようと思ってた。ああこんな事なら受けなきゃよかった。親も先生もそりゃあ喜んで喜んで、わたしは全然喜べなかった。

だって京都だよ。
西日本だよ。関西だよ。



坂田くんと、離れたくない、よ。



だからわたしは合格発表のあと坂田くんに会った瞬間に泣いてしまった。不可抗力。ぼろぼろと意思に関係なく溢れ落ちる涙を、坂田くんはあわててかけよってぬぐってくれた。坂田くんも第一希望、合格したって。よかった。よかったね。坂田くんずっと必死に勉強してたんだもん。

「京大、受かったの、」
「……まじで?」
「っさかたく…ぅぅ…」

坂田くんののびきってだぼだぼのカーディガンにしがみついて、わたしは嗚咽をあげて泣いた。坂田くんはずっと背中をさすっていてくれた。



「坂田くんと離れたくないよぉ…っ…」



ほんとうはね、心の奥底で、よろこんでる自分が、いる。でも、でも、でも。それを肯定してしまったらわたしは坂田くんと離れなければいけない。つらいよ。いやだよ。坂田くん。

ぎゅう、と抱き締められて、坂田くんの熱がわたしの体に転移する。

「でもお前は、ずっと目指して頑張ってきたんだろ」
「っ…う…」
「だったら、行かなきゃ駄目だ」
「でも…っ…」
「俺達に距離なんか関係あるかよ、ばーか」

そう言って坂田くんはいつもみたいに笑うから。大人になんてなりきれないわたしに、笑うから。


わたしは、彼から離れる決意をする。



好きよ、坂田くん



だいすき



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