ああまただ。
うーんどうしよう…これ…
わたしは下駄箱の前で立ち止まったまま時間だけが無意味にすぎていく。
「何してんの?」
あ、坂田くんだ。
坂田くんとわたし。
「ストーカー?」
坂田くんが目を丸くする。そりゃあそうだよね。毎日のように下駄箱におんなじ人からラブレターが入ってるとかね。そりゃあストーカーだと思うよね。驚くよね。
「まあそんな大袈裟なもんじゃないんだけど…」
「いや大袈裟じゃなくないだろ」
「せいぜい引いたのは愛してますとか書かれてたくらいで」
「十分やばいだろそれ!」
ざわめく教室の中で坂田くんが鋭いつっこみをいれる。そんなにやばいかなあ…まあでもこのまま放置してたらそのうちカミソリとか生写真とかいれられそうだもんね。さすがにやばいか。
そういうと坂田くんは
「随分古典的な考えだな…」
とか言って笑ってた。
「どうしよっか…」
「よし」
坂田くんがわたしの腕をがしっと掴んでおもむろに立ち上がる。え、ちょ、まったまった。恥ずかしい!予想以上にこれ照れる!腕、腕が!
「そいつん所いこ」
「え、え?」
「すっぱりふりにいこーぜ」
そう言ってにかっと笑った坂田くん。いやまあ、一人で行くより全然いいけど、ついてきてくれるんだ。どきっと、鼓動がうるさい。
乗り込み先はA組。
「ちょっと失礼ー」
ばたんとすごい音をたてて扉がひらく。ちょっと目立つ!目立ってるよ坂田くん!
数名の生徒がなにごとかとこちらを見る。
そこに隠れるようにしてこちらをガン見する男の子が一人。
あの子だ。
「アァあんた?最近こいつに付きまとってるってゆう」
「っなななななんだよっいきなりっ!」
あからさまにびくびくしていて、目が泳いでいる。あっ自分がストーカーってゆう自覚あるんだちゃんと。
「わりィけど、コイツ俺の彼女なんだわ」
…………………………。
…………え?
「だからやめてくんねーかな」
「ちょっ……ちょちょちょちょっと待って坂田くん!!」
ん?と言って坂田くんが振り返る。申し訳ないけどストーカー君(仮名)はもう眼中になかった。
「かっ…かのじょって」
「迷惑?」
そう言って上目遣いにこちらをみる坂田くん。私は自分が耳まで赤くなるのを感じた。あつい。火照ってしかたない。
「め…いわくじゃ…ない」
絞りだすように言うと、坂田くんは嬉しそうに笑って、「じゃあカップル成立だ」といつの間にやら握られた手をさらにぎゅっと強く握った。
私は嬉しいんだか恥ずかしいんだかでもう片手で顔を隠すことしか出来なかった。
「もういいです…僕のいない所でやってくださいそうゆうことは…」
ぐすっとすすり泣く声で私達はそこにストーカー君がいた事を、思い出す。
そしてそこがクラスの真ん中である事も。
こうして私達が付き合い出したことはクラス全土にひろまることとなった。
「…あちゃー」
「ええええええ」