「きったな…」


先生の部屋に入った第一印象とゆうか、私が発した第一声であった。

部屋自体は木目調の家具で揃えられていて、あったかい印象の暖色を基調とした居心地の良い空間が広がっているのだけれど。


問題は、部屋の汚さだ。



「せんせ…どんな生活したらここまで散らかるの…」

「人生を好きなように全うするとこーなんだよ」

「最もらしい事最もらしい顔で言ってもだめだから!!」


ほとんど使われてない台所と、テーブルの上に乗った菓子類、ジャンクフードのごみ等々、ろくな生活してないんじゃないだろうか。この人。
挙げ句の果てに、冷蔵庫の中にはいちご牛乳しかなかった。


「…先生まさか、さっきのコンビニの袋、夕飯とか言わないよね?」

「…」

「そうなんだ!!!」


それでよく引き取るなんて言ったものだ。
私が料理出来なかったらどうしてたんだろう。


…否、それでも先生なら、きっと。
極端な話、私がたとえ殺人犯だったとしても、助けようとしたんじゃないだろうか


そう思うと、自然と顔が綻んだ。


さっきから、部屋の至るところにごみに紛れて散らばる、授業資料とか、教材とか、ぼろぼろの教科書とか。



先生は本当に、この職業が好きなんだなあ


改めて実感して、何となく嬉しくなって先生の方を見ると、ふかふかそうなソファに腰掛けて、うつらうつらしていた。
そろそろとソファの横に行って、肌艶の綺麗な頬を横から指でつっついてみても、反応は無し。


私も今日は、色んな事があったなあと、長かった一日を思い返してみようと思い、まふっとゆう良い弾力と共に先生の隣に座った。





先生に出会って
先生を知って

先生と住む事になってしまった。



世の中何が起こるかわからない。



先生の寝顔は本当に綺麗で、羨ましくなる位に恰好よかった。
寝ている先生の頬を軽く撫でて、私は先生の肩にもたれ掛かった。



「…今日も一日お疲れさま、せんせい」




色んな事がありすぎて、とても疲れた一日だった。

でも
失いかけた幸せを、これ以上なく感じた一日だった。















銀八は自分の肩にもたれ掛かってすやすやと寝ている少女を見て、軽く溜め息をついた。

頭をわしわし撫でてやると、「んー」とか言って気持ち良さそうに身を捩らせる。


「ぎんちゃ…せんせ…」

「んー?」

「だいす…き…」


えへへ、と笑ってる名前は多分、寝惚けてるんだろうけれども。



……やべ
何このかわいい子。


「…犯されてェのか、バカ」



苦笑混じりに微笑んで、銀八は寝ている名前の頬に軽く口付けをした。




俺だけの秘密。







坂 田 先 生




(うー…おいしく…ない…)
(…どんな夢みてんだ)
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