真夏日。
じわじわと地面から足を通じて身体に熱を運ぶ。たらりと垂れる汗を拭ってもあまり意味はなく、空は雲ひとつない晴天で、太陽がぎらぎらと私達を照らしていた。
海。
「海だ……!!」
後ろを振り返れば3Zの皆が今にも入りたくてうずうずしていた。皆既にTシャツの下には水着を装着済。
「先生まだー!?」
「おーそれじゃ、」
いっちょはしゃいでやりますかーと、気の抜けた声を合図に一斉にわーっとみんなTシャツを放り投げる。
男子がごくりと生唾を飲み込む音がした。
意外に精鋭揃いの3Z。私は女子のみんなのスタイルの良さと細さに嘆息する。
「みんなほそーいきれーい…」
「…あんたが言うとただの嫌味にしか聞こえないわよ」
「へ?」
阿音がはあと溜め息を吐いて、笑う。ニブチンって言われた。どうゆうこったそれ。
一方。俺は男子の視線が一気に名前に釘付けになるのを見て、溜め息混じりの苦笑を漏らした。
凄くぶっちゃけた話、名前の身体は群を抜いて綺麗なのだ。
無駄な肉付きはなく、適度に引き締まったすらりと細くゆるりと描くラインも、長い四肢も、日に焼けていない白い体も、日に照らされて輝いて。
男なら誰でも惚れる。多分。
まーいいんだけど。
一昨日の夜。
「名前ー」
「んー?」
「水着見して」
鼻歌を歌いながらキャリーに荷物を詰め込む彼女はがったん!ともの凄い音をたてて服の中に思いきり顔を突っ込んだ。
俺はにやりと笑いながら、すたすたと歩いて再起不能状態の彼女の後ろにしゃがむ。耳まで真っ赤なのがバレバレである。
ようやく復活した彼女は勢いよく振り向こうとした衝動で「うわっ」と後ろ側(つまり俺側)によろけて、ぽすりと腕の中にすっぽりおさまる。
「ななな何をっ言って…!」
「…だって名前の水着野郎共に見られんのやだけどォ」
名前海入りたいでしょ。そう言って横から顔を覗きこんで、回した腕に力をいれてぎゅっと抱きしめると、真っ赤な顔で小さくこくんとうなずいた。何この子。可愛すぎるんですけど。
「その前に、ね。見ときたいなァと」
「…そんな見せられるもんじゃありません」
「じゃあ水着見せんのと一緒に風呂はいんのどっちがいい?」
「!!!!!」
振り向いて可愛い顔をこっちに向けるから、思わずちゅっとリップ音付きの軽いキスをする。ぴくりと反応する名前の体に、俺の体も熱っぽくなる。
「ず、ずるい」
「名前が入ってる最中風呂場乱入するけど」
「…み、ずぎの方が、いい」
「ちょっと残念」
「せんせー!!!」
それから名前が寝室の方にこもって数十分。
まだー?と聞くと一応…とかもごもごと言ってるから、勢い良くすぱーんっといい音をたてて襖を開くと、「ぎゃーっ!」という悲鳴と共に水着姿の名前が登場。
…………。
何この子。超綺麗。超可愛い。
俺が嘆息しながら惚けて見ていると、期待はずれで悪かったですねーと勝手に勘違いしてぷいっとそっぽを向いてしまった。それも可愛い。そろそろ自分馬鹿なんじゃないかと心配になってくる。
近くまでいってしゃがんで、思いっきりぎゅーっと抱きしめて、白すぎる綺麗な肌に、少しだけ傷跡を残したくなって。そのままかぷりと露になった首すじに噛みつくと、ひゃっと小さな悲鳴と共に名前の体は一瞬びくりと反応する。
「名前、身体、すんごい綺麗」
「え、う、」
「食べたい位、」
ちゅうっと吸い付くとびくっとまた過剰な反応を示すその身体も、全部が愛しい。
そろそろ馬鹿だな。俺。
「やっ…せんせ…っ…」
「襲ってしまいたいのは山々なんですが、」
「ちょ、や、くすぐったい!」
露になっている素肌を指先でなぞるときゅっと体をよじる彼女に、だからえろいって、と内心本当に襲いたくなる衝動に駆られるが、
「それはまだ、ね?」
動きを止めて彼女の唇に人差し指を当てると涙目で上目遣いに見てきた。やっぱり襲ってやろうかと思う。
「残念?」
「っ…全然残念なんかじゃない!ばか!」
「本当、」
名前は可愛いーな、と言えば先生の方がかっこいいもんとか真っ赤な顔して言うから、もっかいキス。おまけのキス。
好きすぎてやばい。きっと俺はこの子に溺れきって、もう脱出不可能だ。
ちなみにそれを始終全部沖田に聞かせてやる(ストレス発散)と、沖田は溜め息をついて、
「…どこぞのバカップルののろけ話を何で俺が聞かなきゃなんねえんでィ」
といい返答をくれた。満足。
それに、
「せーんせー!」
ぶんぶんと手を振りながらこちらに満面の笑顔を向ける彼女に、こちらも手を振り返す。
どんだけ野郎共が見つめようがなんだろうが、名前は俺のもんだし。
の ろ け ば な し
今回銀八目線なんですね?はいそーです。ただ俺がのろけたかっただけなんで。