夏合宿です。


「せんせー楽しみだね?」

「だなァ」


がちゃりと鍵を閉めて、室内と室外の温度差にくらりと目眩がする。そんなじわじわと纏わりつく熱気に包まれて、私と先生は学校のバス乗り場まで一緒に歩く。

じりじりと蝉が鳴く。
汗が首筋を伝う。猛暑。

ふう、と息をつくと、先生がリュックに提げていたキャップをぶちっと外してぼすっと私にかぶせてくれた。


「倒れんぞ、かぶっとけ」

「んーありがとー」


二人で他愛もない話をしながら学校につくと、ほぼみんな3Zの面々は集まっていた。


「おーおー何だオメーら張り切ってんじゃねーの」

「そりゃあ一大イベントですもん」

「夏といったら、」


皆して顔を見合わせて、にやりと笑う。


「「「海だー!」」」


みんなできゃあきゃあ言いながらバスに乗り込む。私はそんな面々を遠目から眺めて、自然と頬が緩んだ。


「名前ーどしたー」


ひょこっとバスから顔をだして、私を手招きする先生。ガラリと窓が開いて、神楽ちゃんにも呼ばれた。


「名前ーっ何してるネ!早く早くー!」

「今いくー!」


楽しい夏合宿が、スタートを切った。




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バスの中では専らカードゲームをやっていた。私と神楽ちゃんが隣で、前の妙ちゃんと九ちゃんも一緒に始める。直後近藤くんも乱入し(妙ちゃんからアッパーをくらっていたけど、鼻血をたらしながら続行。すごいハングリー精神である)近藤くんに連れられて土方くん総悟くんも参加。マダ…じゃなくて長谷川くんはQ人を見つめて重いため息をついてたから無理矢理参加させた。そうこうしてるうちに参加人数はほぼクラス全員になってしまって、もはやゲームにならなくて、でも本当にお腹の底から笑った。


「銀ちゃんせんせー!」

「おーよ」

「先生もはやくこっち!」


私が両手をぶんぶん振って呼び寄せると、先生は呆れたようにふっと優しく笑うから、私はその笑顔にどきっとしてしまって。慌ててうつむく。
みんなにばれたらどーすんだ。わたし。
火照る顔を冷まそうとしてると、神楽ちゃんに「名前顔赤いヨー大丈夫アルか?」と心配されてしまった。


「じゃー先生も参加で」

「配るよー…って結局ひとり枚数二枚くらいしかないけど」

「おわんねェ!!」


結局王道でいこう!とババ抜きを始めたはいいものの延々と終わらず、終わらないまま合宿所についてしまって。決着は帰りのバスとゆう事で幕を閉じた。



「わー…海だー」


ざぶんと波が押し寄せて、砂をさらってゆく。音がする。海にきた。海だ。目前には青々と広がる境界。はあっと感嘆すると総悟くんが隣にひょっこり頭をだした。


「海は初めてですかィ?」

「うん……ちっちゃい時ぶりだから…」


遠くの方を見つめて目を細める。日が眩しい。総悟くんの方に笑顔を向けると、総悟くんも笑う。


「おいてくぞー」

「あっはーい」


先生によばれて私と総悟くんは合宿所の方に小走りで向かう。先生は今日はさすがに白衣は熱いからーと初めて外であった時のようなラフスタイル。
遠目からみると身長が高くて四肢が長いからほんとうに羨ましいほどかっこいい。

ぼーっと眺めていると、視線に気付いた先生がわたしのほうをみて笑った。


「なにー?先生がかっこよすぎてみとれた?」

「うん」


冗談で言ったらしい先生も、私の返答にやや驚き気味で目を丸くしていた。えへ、と照れ笑いをすると先生の大きな手が、私の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。


「可愛いのは名前でしょ」


ぼそりと耳元で囁かれて、私の心臓は先生の低音ボイスにどきっとはねあがる。

これは反則でしょ、先生、


にやりと笑って先生は先に中に入っていってしまう。追いかけて私も中に入ると優しそうな女将さんが迎え入れてくれた。


楽しい夏になりそうだ。


高鳴る胸と波の音に包まれながら、私達の最後の夏休みが幕を開けた








夏 合 宿 1 日 目



(ちゃんと水着も準備してきたかー)((おー!!))

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