しとしと しとしと

なんて効果音がぴったりな生憎の雨模様。梅雨がきた。連日の雨とじとじとまとわりつく湿った空気に嫌気がさしてきた頃。
する事もなく暇を持て余していた日曜日。両親は共に仕事で外出中。


事件は起きた。


生憎の雨模様に外に出る気も起きず部屋でごろごろしていると、充電器に挿しっぱになっていた携帯が安っぽい着メロを鳴らす。ぱかりと開けば彼女からの着信。自然と通話ボタンに親指が重なる。

ぽち、


「もしもし俺だけ「さささささささささかっさかたくんたすけて!!!!!!!」


耳を突き刺す大音量に思わず眉間に皺がよる。なんだなんだ。


「…どした」
「きてっ…!うち、今、すぐっ…いっ!!ぎゃあいあああああこっちこないでえええっ…ブツッ…ツー…ツー…ツー…」
「おい、ちょ、」


やばくないか。これ。
俺の額を脂汗が伝う。ぼーぜんと携帯を握ったまま立ち尽くす俺ははっと我にかえって、かばんやらをひっつかんで家を飛び出す。俺から彼女の家まではそう遠くない。
無我夢中で走り続けた。ええい。こんな時に雨もくそも関係あるか。








「さかったくんっ…!!」


俺の姿をみた瞬間に泣きそうな顔をさらに崩して俺にぎゅっと抱き着く彼女。俺は飛びそうになる理性をかろうじてセーブ。


「どうした?」
「でたっ…でたの…!」



「Gが…!!」



俺はしばらく思考停止した。ちょっと待て。まさかGのために俺はここに呼ばれたのか。

はー…と溜め息をついてずるずるしゃがみこんだ。


「そんなことか…」
「そんなことじゃないでしょ!」
「あーもー心配して損した」
「だってGだよG…」

「「あ。」」


ぶーん、と嫌な羽音をたてて俺達の横を通過したG(隣でぎゃーぎゃーうるさい彼女は置いといて)は玄関から空に羽ばたいていった。さようなら。G。

俺あんま来た意味なくね。


「お嬢さん、Gは自分からでていきましたよ」
「でも一ぴきいたら百はいるって言うじゃん…」
「家の人は?」
「仕事…」

「じゃあ俺がいてやろーか」

そう言えばまだ涙で濡れてる顔を輝かせて。こくんと小さく頷いた。ったくもーかわいすぎんだよ。まじで。

そのまま食べてしまいたい衝動に駆られる。ぺろりと涙を舐めれば、彼女は火がでるんじゃないかってくらい顔を赤くして。


「さささ、かたくんっ…!」
「帰んなって言ったのはお前だからな?」
「っ…!!」


無理矢理唇を塞いで、口内を侵食すれば彼女の体はびくりと反応する。口の端から甘い吐息が漏れる。


いや、正直な話、


は、と息をつけば顔を赤くしたまま彼女の熱っぽい視線が交差する。


「…たまんねェな」


その後の想像は皆様におまかせするとして、こうしてG騒動は幕を閉じた。


彼女と一緒に住み始めた今も、変わらずGの処理は俺がやらされてます。おわり。



坂田くんとわたし。
(君が呼ぶなら何度だって)



「坂田くーんまたでたあー」
「はいはい」


それでもちょっとは耐性がついたらしく、前ほどは騒がなくなりました。



requested by 梨花さん
2010.05.23. 柳
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