私の所に隊士の皆が来る前に、桂さんは姿を消した。「次会うときは敵だな」と爽やかに笑って。

でも私は次桂さんに会っても、捕まえる事は出来ないだろうなあと思った。


「ご用改め参る!!」


スパーンと勢いよく襖が開いて、トシ、総悟くん、近藤さん、退と次々にどたどたと入ってくる。皆が皆息を切らして、必死の形相で、わたしはそれにじわりと視界が滲む。


「みんな、」
「名前っ…!!」


ぎゅう、っとトシが私を抱き締める。それを見た総悟くんがひゅうっと口笛を吹いた。

私はそれすら気にならないほどに、途方もなく安堵していた。


意外と、本当は怖かったのかもしれないなあ。


かたかたと震える体も、転移するトシの体温も、だんだんと落ち着いていく心も。


やっぱり私はトシが好き。
好き。大好き。



「桂に、何もされなかったか」
「うん」
「よかった」
「うん」


なんかこの間とおんなじだね、と呟くと、そうだな、と笑った。

時計を見ればもう5月5日。


「あー過ぎちゃった」
「?」


ちゅ、

私から触れるだけのキス。
見開かれるトシの目。



「誕生日おめで…」




とう、と言い終わらないうちにいきなり口が塞がれる。今度はトシからのキス。それはだんだんと深くなっていって、甘い吐息が漏れた。私の頭はもうパンク寸前。

ゆっくり離された唇。熱っぽい視線が交差する。


「とし、」
「反則だろ…」


はあ、と溜め息をついて、くしゃりと髪を撫でた。まっすぐ私の目を見据えて、微笑むトシに私は上手く笑えなくて。


ぽろりぽろりと涙が伝う。


一層トシは笑って、一層強く抱き締めた。私は子供みたいに泣きじゃくって。

温かいなあ。

トシの温度。わたしの温度。みんなの温度。私を包み込む空気はいつも温かくて優しくて。そんなみんなに護られて、私は今日もこの世界をまた好きになる。

私は君を好きになる。



泣くなよ。



私を撫でるこの人手はいつも優しい。
この人に恋をして、本当に私は幸せだと思った。


「俺達の事忘れてやせんかー」

「「あ。」」


その後散々ネタにされたのは言うまでもなく。
私たちは今日も二人寄り添って生きる。生きていく。

貴方を生んでくれた世界を、貴方と出会わせてくれた世界を、貴方と恋した世界を、貴方と生きる世界を、愛しながら。



来年も一緒にお祝いできますように。




Happy birthday to 土方十四郎 2010...
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