トシにはやっぱり黒が似合うと思う。

そう思ってちゃり、と綺麗な光沢の黒い時計を購入する。あとマヨも買ってあげよっかな。

久しぶりの有給を使ってトシの誕生日プレゼント選び。なかなかいいものが買えたなあと思う。


「プレゼント用ですか?」
「あっはい、お願いします」


店員さんは彼氏さんですか、いいですねえとにこりと笑った。照れ臭くてえへ、とこちらまで笑ってしまう。
そうですよね。今年からもうサンタ状態からの脱却ですもんね。

手渡された小包をそっと大切にかばんの中にしまった。
もう明日か。ここ数日なんだか色々ありすぎて時間の流れが物凄く早い気がする。


「!?」
「真選組の、名前殿とお見受けする」


さらりとなびく髪が視界に入る。とす、と首に衝撃。なんか最近こんなこと多くないか。わたし。
薄れる意識の中で考えるのは、トシの事。

ごめんね。また迷惑かけちゃうみたい。5日ぴったりにおめでとうって言おうと思ってたのに、そんな簡単な事すら出来ない自分が情けない上に不甲斐ない。

私は意識を手放した。







「トシ、」


ぱちり、と目を覚ますと畳の上だった。起き上がればずきりと首が痛む。思わず声にならない悲鳴をあげた。
そうだ、誘拐された?

「いっ……つ…」

布団に寝てはいるものの、手首が縛られているので身動きがとれない。


「目が覚めたか」


す、と襖の開く音と共にその人は現れた。絶句。ぱくぱくと口は開きっぱなし。


「…桂、小太郎?」
「手荒な真似をしてすまなかった」
「いや、あの、」


いつも捕まえようとしている人が目の前にいる。てゆうか私が捕まってる。え、なに、なにこの状況。おかしくね。え?え?


「まあ言わんとしてる事はわかるが、真選組の主が何故ここにいるか、だろう」
「え、あ、はい」
「つい先日、攘夷浪士とドンパチやらかしただろう」


ああ、一昨日の。こくりと頷くと桂さんははあと溜め息をついた。


「そやつが高杉一派の鬼兵隊の下っぱだったらしくてな、」


高杉一派といえば過激派で知られている最も危険な攘夷志士の集まりだ。
まあ町の中で剣振り回す位だもんな。妙に納得。


「真選組唯一の紅一点である主に、高杉が目をつけたらしいと、奴を調べてたうちの奴が偶然聞いたらしいのだ」
「え……」
「事態は急を要したのだ。説明もなくすまなかったな」


そう言って項垂れるから、私は慌てて首をふる。


「いえ、そんな、お礼を言うのは私の方なのに…!本当にありがとうございます…!」


そう言って私が笑えば、桂さんも初めて笑顔を見せた。
なんだか色々勘違いしていたみたいだ。桂さんは、こうゆう人だったんだなあ。
彼が攘夷派である事は、決して忘れてはいけない事だけれど。


ふと、我に返る。


「いまっ…何時…っ」
「もう深夜だが、真選組の方に連絡はしておいたぞ」
「連絡って、」
「名前は預かったーと」
「うわっこの人馬鹿だ!!」


急いで電話を借りる。その前に縛っていた手首の紐を解いてもらう。
ベルは3回と鳴らないうちにガチャリゴトリと凄い音と共に出た。


「てめェ桂かァァァァ!!名前をどうした!!!」
「…トシ?」

「…名前?」

「うん」


ああトシの声だ

ああ名前の声だ



「無事か」
「全然大丈夫。事情があって匿ってもらってるだけ」
「…よかった、」


唇をぎゅっと噛みしめる。泣きそうになるのを必死に堪えて。


待ってろ。


すぐに迎えに行く。

その力強い声に、ぽろり。
一筋涙が溢れた。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -