まだ信じられないんですが。
私とトシは付き合う事になったみたいですよ。


「沖田隊長がまた触れ回ってたよ…とりあえずおめでとう」
「さがる、」
「何?」
「あたしのほっぺ思いっきり殴ってくんない?」
「夢じゃないから!」


仕方なく昨日からもう何度も繰り返して赤くなった頬をまた自分で引っ張る。痛い。痛覚はちゃんと機能してるようです。


「本当なんだなあ」
「こっちからしたらやっとかって感じだけどね」
「は?」
「だって副長もバレバレだったし」
「うっそお」


「おい名前、ボケッとしてんな外回り行くぞ」


トシにいきなり呼ばれてどきり。動きがぎこちなくなる。だってだって、あんな告白されたんですもん。顔だってまともに見れませんもん。


「はーい…」
「頑張ってね」
「…ありがと」


退からの力強いぐっという効果音と共にガッツポーズの声援を受けて、私は小さく頷く。何でこんな意気込んでるんだわたし。彼氏じゃないのか一応。

彼氏。

彼氏かあ。

その大きな背中を追いかけて、昨日から彼氏さんになったんだよなあと思うものの、いまいち実感が湧かない。いや実感が湧かないとゆうか、意識しすぎてまともに返事すら出来ない。

それに比べてトシは至って普通。普通すぎる。いつも通りすぎる彼に、これだけ意識している自分が馬鹿らしくなってくる。


「そういえば、名前」
「なっなに、」
「お前、昨日の返事」
「へ?」


くるりと振り向いてこちらを向いた。私は思わず身構えてしまう。そういえば、昨日はあの後頷くのに精一杯で、返事らしい返事をしていなかった事に気付く。


「そ、れは空気読んでくれるとうれしいんだけど」
「お前の口から直接聞きてえんだよ」


トシが真剣な顔で見詰めてきて、うっと言葉に詰まる。どうしよう。どうしようどうしよう。顔が熱い。言葉が出てこない。たぶんこれ以上ないくらい赤くなってるんだろうなあと思って、その事実にまた顔が火照る。


ぶっと、トシが吹き出した。


「なっ…なによう!」
「いや面白くて…」


肩を震わせて笑っている彼を見て、わざとかと気付いた。
気付いてもう腹立たしくてしょうがなくて、それ以上に自分の反応が恥ずかしすぎて顔を覆いたくなる。


「トシのばか!!」
「いや、ほんと、」


ちゅ、と私の唇に彼の唇が軽く触れる。キス。彼の唇は柔らかくて、その感触に私は状況が飲み込めず、
事態を理解した瞬間に心の中で発狂。

え、ちょ、え、えええええ え ええええ、ええ

離れた唇から紡がれる言葉。彼の低い声に、くらりと倒れそうになる。

それは、反則じゃないですか。


「可愛すぎんだよ」



バーカ。


にやりと笑った彼はやっぱり余裕で、私はいっぱいいっぱいなのが悔しくてしょうがなかったけれど。

それ以上に私は彼が好きで。


「トシの事が、すき。です」


しりすぼみになって消えていった私の言葉に、少し目を丸くして、そっぽ向いて少しだけ赤くなった彼の顔をみて、私はしてやったりと思うわけです。

それが私の精一杯。



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