毎年毎年、この季節はうだうだ悩む。

梅雨のじっとりとのしかかる空気と共に、ずるずると横に倒れた。雨。縁側。ざあざあと降り注ぐ雨は一向に止む気配を見せないままに3日程経過していた。

しまった。今年もか。

7月8日はもう後小1時間程で終わってしまいそうだ。毎年そうなのだ。こうしてうだうだと、梅雨の纏わりつく空気に包まれながら、だらだらとタイミングを逃してしまう。
見上げた夜空に星など1つも見えない。

ああでも今年は、

ちょっと違ったかな。この時期になると必ず姉上、ミツバさんから贈り物があったのだけれど。今年からそれは、もう、ないから。道理で局長やトシやさがるが無駄に盛り上がるわけだわ。そんなのきっと彼にはばればれだろうに。

「あー…もうかったるいな」

ごてんと縁側に横になったまま目を瞑る。こうしてまた今年も過ぎていくんだ。それで結局何も言わないまま明日を迎えるんだ。総悟。私は基本的に面倒臭がりすぎるんだと思った。いちいち回りくどいのとか、うだうだ考える事が嫌いとゆうか、苦手とゆうか。それを言うといつも単細胞だとか罵られるんだけど。

「何がかったるいんでィ」
「…あんたの誕生日考えんの」
「おお、意外な解答」

目は開けない。隣に座るのが音と空気から伝わってきた。

「…近藤さん達は、」
「気ぃ使いすぎだよね」
「分かってんじゃねーの」
「あんたにはもう必要ないって、分かってるから」
「…ふん」

ゆっくりと目を開けば、空を見据える彼の横顔がはっきりと、目に焼き付く。月明かりもない、この雨模様の中で。星の無い空を睨む彼を、途方もなく美しいと思った。流れる涙も、全てから切り離された自己のその存在すら。

「もう過ぎたね。8日」
「本当だ」
「次の年も、9日を迎えられたらいい」

星の無いこの空に、彼は何を願うのだろう。彼は何を望むのだろう。
ああ神様。いるのなら、もしいるのなら、この人がきっと幸せになれる未来が築けますよう。この人の未来がきっと笑顔に満ち溢れていますよう。

そう願わずにはいられなかった。雨は相変わらず止む気配を見せない。それでいい。私の嫌いな雨。この雨粒が、彼の哀しみを押し流してくれますように。

星の無い空に、密かに願って。
私はまた目を瞑った。




今夜も包まれながら永眠。優しい夢をみようか



「誕生日おめでとう」

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