その男の名前は坂田銀時。くるっくるの天然パーマに銀色の髪の毛。死んだ魚みたいな目ぇして、いちご牛乳にあんこいれるような人。ファーストコンタクトの時からおかしなやつだとは思ってた。わたしがパチンコ屋の向かいの店から出てきた時のこと。天気予報がはずれて生憎の土砂降りの中、途方に暮れていたわたしにパチンコ屋から出てきて話しかけてきたのがこの男。
「おーいそこのおねーさん」
ちょいちょいっと手を振られてそれがわたしへの合図だと気付くと、彼はその死んだような目でこちらに笑いかけた。
「傘、ねーの?」
「…天気予報、晴れっていってたんで」
「俺もだ」
止むまで話さねーか、と提案されて、まあこのまま一人で立ち尽くしてるのもアレだしなあと思ったわたしは結局向かい側にいるその男と話す事にする。
意外と趣味が合い、甘党な事、ジャンプ派な事、結野アナファンな事、家族がいない、事。
「じゃあおねーさん、今1人なの」
「両親も死んじゃって、雨なのに迎えに来てくれる人1人いないわけですよ、私には」
「ふーん…」
少し小降りになってきた所でばしゃばしゃと水溜まりを通ってこちらに走ってくる足音が聴こえる。銀さーん、銀ちゃーんと、かわいい二人。ああ、この男には迎えに来てくれる人がいるんだなあ。
「なァ、おねーさん」
「迎え、来たみたいよ」
「ウチくるか?」
私が目をぱちくりさせてると、その二人が持って来た一本の傘を傾けて、手招きする。
「いいんで、しょうか」
少し畏まって、その小さい二人に問いかけると、二人して可愛らしい笑顔をこちらに向けて、
「万事屋メンバー増えるアルかー!この歌舞伎町の女王、神楽が歓迎するネ!」
「うち給料でませんし、オマケに卵かけごはんばっかりなんですけど…こんな所でよければ歓迎しますよ」
「だってよ、どーする?」
そうして私はこの男の家に転がりこんだ。神楽ちゃんと新八くんと、もう家族みたいだ。きっと家族よりも強い、絆。
「気付けばもう何年?長い事一緒にいるね」
「そーだなァ」
欲しい物なら手に入れたんだ。たくさんたくさん色んな物をくれた。この男に。坂田銀時という男に。
私達はもぞもぞとベッドに潜り込む。時がたって、私達はこうゆう関係になったわけです。お恥ずかしながら。
「銀ちゃんはさーなんであの時わたしに話しかけたの?」
それがなければ出会ってもいなかったでしょう。私達。そう言うと一瞬固まった彼はわたしとは反対方向にもぞりと体を傾ける。そしてぼそりと呟いた。
「そりゃ、あれだよ、」
「なにー」
「…一目惚れ」
ぶはあ、と吹き出すと、髪の毛をぐっしゃぐしゃにされて、ぎゃーとか言いながら彼の顔を見れば珍しく(そりゃあ初夜の時並みに)耳まで赤くなってて、かわいくてかわいくてわたしははだかのまま彼のお腹に抱きついた。
「銀ちゃん顔まっかー」
「ばっ見んじゃねー」
「ふっふふふ、かわい、」
「馬鹿」
「なんかあたしたちバカップルみたいだね」
そう言って上目遣いに顔を見上げると、また髪の毛をぐしゃぐしゃにされた。
「にぎゃー」
「みたい、じゃなくて明らかにバカップルだろ」
「そだねー」
あったかいね、と言うとそーだな、と笑ってくれるこの人がいる。朝目覚めて、おはようと言ってくれる子達がいる。何かと面倒をみてくれる下の人達も、キャバ嬢友達も、攘夷志士の友達もできて。欲しいものなら手に入れたんだ。たくさんたくさん、護りたいものが出来たんだ。
あるだけの夜に。あるだけの愛を。
ありったけの、大好きを。
ありがとうに出逢う町、歌舞伎町。
それを愛と呼ぶなら、
私は君にあるだけの愛を
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さよならパパのみうさんへ
貼り返しお礼坂田です。
糖分高めにしたはずなんですが…どうなんだろう(…)笑
ありがとうございました!
2010/柳