あの頃の私はただひらすらに、明日が来るそのスピードが早くて早くて、毎日をただひらすら走って走って、あの人の背中を追い掛けていた。
愛すべき仲間もいた。大好きな人達。幼いながらに大切だった人々。


あの頃の私はただひたすらに、明日が来ない事を祈っていた。ただ憎悪と渇望と共にひたすら剣を握り、剣を振るい続ける毎日。そんな毎日がとてつもなく恐ろしかった。いつか私は幸せを忘れてしまうのではないかと思った。先生を、皆を、愛していた日々を。汚濁にまみれたこの憎しみに呑まれてしまうのではないかと。
それは皆、同じだったのかもしれない。
私には愛すべき仲間がいた。共に戦い、果てた仲間も、残された仲間も、一体何を得て何を失ったのだろう。
ずしりと重いそれを抱えて、私達はどこへ向かうのだろう。


その頃の私はただひたすらに、明日を生きる事に必死だった。戦争は終わった。ばらばらになった仲間達はそれぞれ何処へ行ったのか、消息は分からないまま、不明。深傷を負った私は果てるなら先生と共に在りたいと、ボロボロの姿で跡地へ向かう。こんな姿を見たら先生はなんて言うだろう。笑ってくれるかな、いや悲しむだろうな。




ごめんなさい、先生。





「何してんの、こんな所で」

名前を呼ばれて、残り少ない余力で声の方に顔を向けると、懐かしい顔があった。ずっとずっと、好きだったあの人。

「……銀、時?」

ああこれは神様が死ぬ前に見せてくれた夢なのかもしれない。神様ありがとう。最期の最後に彼に会わせてくれた事、とてもとても感謝しています。
ああ死ぬのか。彼にも一言言っておけばよかったかな、ずっと黙ってたけれど、私はあなたの事が、


























この頃の私はただひたすらに、明日を迎えていた。

銀時は私をおぶって新しい居場所まで帰って、手厚く看病してくれていた。
目を覚ました時、「よかった、」と泣きそうな顔でぎゅうと抱き締めてくれて、私は安堵して、どうしようもないくらい涙が溢れて止まらなくて。

私はまだ生きている事を自覚して、途方もない喜びを感じる。
まだ彼の隣にいられる事。まだ人を愛していられる事。また新しい場所で、大切な人達と生きていける事。

「銀時ー」
「んー?」
「いつかは言おうと思ってたんだけどね」
「んー」
「ありがとう」
「…おう」
「続きは…まだいっか」
「えー?」
「えへへー」
「じゃあ俺からも一個言いたい事あんだけど、」

立ち上がった彼は私の前でしゃがんで、目線の高さを合わせる。顔の近さに自分が耳まで赤くなるのがわかった。

「愛してる、ずっと前から」

照れてふい、と赤い顔を背ける彼の腹部にがばっと抱き付く。そのまま声を殺して泣いた。


ずっとずっと、あの頃からずっと私の隣には銀時がいた。ずっとずっと護ってくれていた。私と共に在ってくれた。愛してくれた。

私達が共に歩んできた証。
私達の愛の結晶。



歩 ん だ 証


人生は儚く脆いから、
美しく咲き誇る花でありたい
君の隣でずっと、ずっと、





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企画明日様に提出!

わけわっかんなくてごめんなさい!当人はとても楽しく書かせてもらいました!

村塾→攘夷→終戦→今 です

ありがとうございました!


2010/柳
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