最初にいっておくけれども、断じてわたしはわざと多く作ったわけではない。断じて。たまたま余っただけ。たまたまだよ!たまたま!
家庭科の授業はいつも男女別で女子が家庭科、男子が体育はもう当たり前と化してしまったこと。
「うまそーな匂いしてんじゃねーか」「あんたにマヨ以外をうまそうと思える感性が存在した事に驚きでさァ」
とか男子が窓から覗いてくるのも当たり前と化してしまったこと。家庭科室一階に設計したやつ誰だよ。
「土方くん!」「沖田くん!」とか女子が頬を赤らめてる中さして興味もなくもくもくと包装するわたし。女の子らしく今日はチョコレート菓子って事で、チョコカップケーキの中に板チョコを砕いたブロックを数個投入。絶対おいしーよこれ。
一人でにやにやしながら今や今やと食べる瞬間を待ち構えいると、カーテンの隙間から聴こえる声。
「なににやにやしてんの」
その声の主はカーテンに隠れるようにしてこちらによう、と手をあげた。
「おーさかたじゃん」
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン」
「いや呼んでないし」
「ひでえー」
笑うさかた。笑うわたし。本当は私の所に一番に来てくれた事がすごく嬉しかったなんて絶対言ってやんないけど。
「今日なに」
「カップケーキinチョコブロック増し増し」
「すげェ!」
胸がぎゅっと締め付けられるように鼓動が早くなる。誤解がないよう言っておくけれど別に余計に1つ坂田のために作ったとかそんな事はない。断じてない。
「…いっこ余ってるよ」
直視出来なくてそっぽ向くと、にやにやと笑う坂田からの視線。こいつにはばればれかもしれないなー。多めに作った事も、坂田にあげようと思ってた事も、わたしが坂田を好きな事も。
「いただき」
私の手にあった1つをひょいっととって一口で食べてしまう坂田。…あーもう、ずるい。ずるいずるいずるい!そんな幸せそうな顔して。わたしばっかりどんどん好きになってく。
「美味しいじゃん」
「まだ食べてないですー」
坂田がちょいちょいと手招きするから、何よーと不貞腐れながら坂田の方に寄ると

カーテンが舞ってわたしたちを包み込んで


ちゅ

さかたの唇が私の唇にふれた

え、ちょっとちょっとちょっとちょっと、え、え、何、目の前に坂田が、えってか近、ちかいちかい!うわ、坂田の唇やわらか、これわたしファーストキスなんですけどどうしてくれんの責任とってよバカ!ばかばかばか!なんでこういっつもいっつもわたしの心をいとも簡単にさらってくかな!この人は!
坂田の口から私の口へうつされたチョコレートは甘くて甘くて、わたしも一緒にとけてしまいそうだった。
「あま…」
「ごちそうさまでした」
にやりと笑ってまた軽くキスして、校庭の方へ走りさる彼の後ろ姿を惚けながら見つめた。
「なんなの…」
台風一過。
きざったらしいなあとか思いつつもやっぱり私は彼がすき。
「すきだばーか」


あまいあまい
溶けるくらい
あまい恋煩い



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企画sweet10様へ提出
ありがとうございました!

学パロ坂田いいわー。
余裕綽々な坂田がすきだ

2010 柳
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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