きらびやかな内装、輝くようなハイライトに、クリスタルは眩しさを感じる。
オーキド博士の付き添いで、グリーンと共に現れたパーティー会場。
一応最低限の礼儀として、ドレスを着衣してはいるが、一人の女子としては場違いな気がしてならなかった。
「…………」
ちらり、と会場全体に視線をやれば、たくさんの博士に囲まれたオーキド博士と、研究者に囲まれたグリーン。
会場のすみっこで、クリスタルは小さく溜息をついた。
すると、後ろからポン、と肩を叩かれる。
フッと振り向けば、そこには見知った後輩の顔があった。
「クリスタルさんっ」
蒼い瞳と、紅い瞳。きっちりと正装をした2人に、クリスタルは目を見開く。
「ルビーくんに、サファイアちゃん…?」
いつもはやんちゃなイメージのサファイアは浅い藍色のドレスを着ていて。
ルビーは普通のスーツに、いつも被っている帽子はどこへやら、今は目立たない色の、しかしオシャレなワンポイントのはいったバンダナをつけていた。
「こんなところで出会えるとは思ってませんでした」
ルビーが言うと、サファイアは大きく頷く。それはこちらも言えることで、クリスタルは小さく笑った。
「2人はどうしてここに…?
あっ、もしかしてオダマキ博士の……」
「サファイアはそれもありますけど、僕もサファイアも今日は別件でここに来てるんです」
「"別件"?」
ルビーがにこっと笑って、ステージに指さす。
黙って視線をそちらに向けて、クリスタルは目を見開いた。
そこには、淡い紺色の長髪を靡かせ、偉そうな男性たちに囲まれているシンオウの図鑑所有者。
確か彼女はシンオウ随一の貴族で、大企業の令嬢。こんなところに居ても不思議ではなかったが、彼女…プラチナの横で平然と伊達メガネを輝かせ、男性たちと商談をしていた見慣れた男にクリスタルは驚いたのだ。
赤渕のメガネの奥に煌めく、黄金色の瞳。
特徴的な爆発した前髪。
見間違うハズなどない。彼は………
「…ゴールド……?」
「ゴールドさんが僕たちを誘ってくれたんですよ。
『今度ベルリッツ家にとってデカい商談がある。有名人とかも集まるみてぇだから一緒に来るか?』ってね」
すると、先に話が終わったのか、ルビーとサファイアを見つけてプラチナが駆け寄って来る。
「……あら、クリスタルさん。ごきげんよう」
「へっ…?あ、あぁ、こんばんは。プラチナちゃん」
「このパーティーはベルリッツ家の傘下提供ですので、何か不便なことがございましたらおっしゃって下さいね」
もっとも、私はそれを聞くだけで実行して下さるのはお兄様ですが。
そう続けたプラチナに、クリスタルが「お兄様…?」と呟く。
「何の話してんだ……ってゲッ、クリス?」
そこに、ナイスタイミング、と言うよりはバッドタイミングで現れたのは…
「ゴールドお兄様、御商談は終わりました?」
「んぁ?…あぁ、あのオッサン中々なヤリ手だが…。
…じゃなくて!なんでクリスが……」
「『ゴールドお兄様』……!?」
一夜の過ち?
「なんで今晩に限って居んだよ…!
前回のパーティーには居なかったじゃねぇか…。だから今回プラチナに協力しに来たのに……!」
「お兄様…。でも、今回の商談はお兄様でないと……」
「わかってらー…、あのオッサン、未だオレのことしか信頼してないからな…」
「……ちょっと、ゴールド?
………聞きたいことが多過ぎて頭痛くなってきた…」
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