「何をやっている」
ふと呟けば、相手はビクリと震え、振り返る。
「ゲッ、シルバーちゃん…。
いつの間に来てたんだよ?」
「さっきから居た。気付かなかったお前が悪い、ゴールド」
「いや、だから窓から侵入すんなっての」
呆れたような、しかし半分諦めたような声でゴールドは言う。
シルバーは、珍しく机に向かって何かを書いていたゴールドに近寄った。
「………」
それに気付いたのか、サッとゴールドが書いていたものを隠す。
「……何故隠す」
「………見る必要ないだろ」
その言葉にムッとして、シルバーは一瞬の隙をついて、奪った。
「あっ!」
「これは……」
奪った紙には、見知らぬ文字が列々とならんでいる。
それが異国の文字と気付くには、少し時間がかかった。
「……返せよッ」
バッ、と奪い返される。視線をあわせれば、そこには辛そうな表情のゴールド。
「…だから、関係ないって言っただろ」
疲れたように言って、溜息をひとつ。
そんなゴールドを見ながら、シルバーは考える。
一瞬だが、別の紙の内容もチラ見した。
そこにはきちんと読める文字で、しかし普段のゴールドからは掛け離れた美しい文字で、シンオウの有名な巨大企業名が。
恐らくは、企画案の書類。
ゴールドが何故、シンオウの、しかも業者の企画書を持っていたのかは、シルバーには理解できなかった。
それでも…、
「……インドアなんて、お前のガラじゃないだろ」
うっすらとだが確認出来たゴールドの隈を見て、フッと笑って手を差し出す。
言いたくないのであれば、今は言わなくても良い。
他人の心に土足で入り込んで、それでも自分の心には一定距離以上踏み入らせないゴールド。
「(…それでもいい)」
シルバーは、口には出さないがゴールドに感謝していた。
暗闇から助け出してくれたのは、彼だから。
「………クリスが、ぼんぐり採取に行ってくれと言っていた」
だが、いつの日か話してくれることを信じて、今は。
「…ったく、クリスのやつ…。
オレらは便利屋じゃねぇっての」
な、シルバー。と言われて、手をとるゴールドに、今はただ小さく微笑んだ。
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