油断した、とゴールドは小さく舌打ちする。

彼の腕には、荒縄がぐるぐると巻かれており、傍に居たルリリとピンプクが怯え、それを大丈夫だと慰めながら目の前の光景をただ見ていた。

「これだけポケモンのタマゴがあれば上等よねぇ!」

「ジャリボーイたちを見掛けた時はどうなるかと思ったが、アイツらは今ポケモンセンターだもんな!」

「さっさとタマゴを回収して、此処からオサラバするのニャ!」

「……………」

やけにテンションの高い紅色髪の女と、ヘタレ気に笑う水色髪の男。

そして人語を喋るニャース。

そんな3人組(正確には、2人と1匹)が、ゴールドが店番をしていたこの育て屋に侵入したのはつい先程のことだった。

「テメェら、人様のタマゴ奪って何しやがる気だ!」

「うるさいわねぇ…。

あたしのモノはあたしのもの、アンタらのモノもあたしのものよ!」

「ムサシ、それどっかで聞いたことあるぞ」

「うっさい!コジロウは黙ってなさいよ!」

「2人とも、ケンカは良くないニャ。

騒ぎを聞き付けてジャリンコたちが来たらどうするつもりニャよ?」

「うっ…」

「それもそうだな…。とりあえず今はタマゴゲットに集中だ!」

「させるかよ!

ルリリ、みずてっぽう!ピンプク、はたく!」

タマゴ回収を再開しようとした3人に、ゴールドは身動きが満足に取れないものの、傍らの2匹に指令を出す。

腕が動かせないため、彼自身のポケモンは出せない。

今居るこのルリリとピンプクだけで、あの3人を追い返す必要があった。

「やったわねぇ!?

いっけぇハブネーク!」

紅色髪の女が腕を振りかぶり、モンスターボールを投げる。

現れたハブネークに、かみつく!と指示を出す。

「よぉし、お前もだ!

いけっ、マスキッパ………」

水色髪の男もモンスターボールを投げる。

………が、マスキッパはゴールドの前には現れず、

「いだだだだ!

だーかーら、こっちじゃないって!」

水色髪の男に絡まっていた。

「……ルリリ、かわしてアイアンテール!

ピンプク、めざめるパワーだ!」

「ハブネーク、蹴散らしなさい!

そこからどくばりよ!」

「マスキッパ、タネマシンガンだ!」

バカみたいにケンカをしていた2人だが、ポケモントレーナーとしての力量はなかなかのものらしい。

まだ小さなルリリとピンプクの攻撃はあっさりとかわされ、攻撃を受けた。

「くっ………!」

「今よ、ハブネーク!ポイズンテール!」

はっとして、ゴールドは2匹の前へ出る。

この状態でポイズンテールなんか受けたらひとたまりもないくらい、誰が見ても明白だ。

ゴールドは、怯えながらも頑張ってくれた2匹にこれ以上のダメージを与えないためにも、身を呈した。

だが、ポイズンテールの衝撃はこない。

おそるおそる、視線を向ければ、そこにはマニューラとドンカラス。

「………何をやっている」

小さな溜息が、呆れた声とともに降ってくる。

「……うっせ。遅ぇーんだよ」



はやく来いっての



「ポケギアにお前からの無言電話がきた時は問答無用でブチ切るつもりだったが、かすかに聞こえる会話が気になって来てみれば……」

「心配して来てくれたワケ?

シルバーちゃんやっさしー」

「………ホントに、心配した…」

「……………へっ?」

「お前への説教は後だ。今はコイツらをぶっ飛ばすのが先だからな」


 








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