天使………
それは純白の翼をもち、個々が自然の力を持つ神の使徒
悪魔………
それは漆黒の翼をもち、個々が対魔の力を持つ闇の番人
2種は、決して相容れることのない純粋種である…
「『相容れることのない』…か」
ぱたん、と分厚い史書を閉じて、神の使徒こと天使族の少年が溜息をついた。
少年の着ている服は、純白に青のラインが入っている。
それが、少年が神直属の精鋭部隊の1人だと教えてくれた。
「調べ物か?珍しいこともあるんだな、ゴールド」
本を閉じた少年の黄金色の瞳が流し目になる。
視線の先には、赤茶色の髪を男にしては長めに伸ばし、白銀色の瞳を持つ少年が立っていた。
もちろん、その少年の服も純白に青のライン。
「ワリーかよ。で、何の用だ?シルバーちゃんよ」
「"ちゃん"言うな。
…今日、"奴等"との議会が開かれるだろ。
俺らも参加しろ、と上からの命令だ」
「それは、何かあった時の為に待機してろってこと?」
「……だろうな」
くるくる、とキャスター付きの椅子を回転させながら、黄金瞳の少年――…ゴールドは、白銀瞳の少年――…シルバーに笑いながら答える。
シルバーは、フッと笑って厭味がてらに続けた。
「まぁ、精々足引っ張るんじゃないぞ」
「それはこっちのセリフだっての」
カツン、と革靴の裏底を鳴らして、シルバーは部屋をあとにする。
その後ろ姿を見送って、もう一度ゴールドは溜息をついた。
議会場の扉の前に、ゴールドは居た。
隣にはシルバーが居て、斜め前には濃紺色の瞳をもつ少女。
彼女はクリスタル。真面目な性格で、ゴールドとシルバーの仲を取り纏める、神直属の精鋭部隊の1人である。
「今日の議会は、先輩方と悪魔族の上層部との会談よ。
先輩方と、相手方上層部の警護が、わたしたちの仕事。
気を抜かずに頑張りましょう」
そう言って、クリスタルは守場の確認をする。
裏口を担当するゴールドは、2人に軽く手を振って、散歩がてらに召喚獣のピチューと歩いて向かうことにした。
「警護って言ったってさー、裏口に人なんか来ないってーの。
ま、その分サボれるからいいか」
なー、ピチュ。
抱き上げたり、小さな石を投げて追わせてみたり。
召喚獣と戯れていると、ふと、視線を感じた。
「………キミ」
話し掛けられて、顔を上げれば、視界に黒が映る。
漆黒の髪に漆黒の翼。
反対に肌はまっしろで、瞳が残酷なまでに赤かった。
「(……黒い、羽………。)
悪魔族の方っスか?議会ならもう始まって、」
ニコッ、と営業スマイル。するとムッ、と顔をしかめて、血のような浅朱の瞳がゴールドを捉えた。
「………さっきの、」
「……………は?」
「さっきの、その召喚獣にむけた笑顔の方が、可愛かった」
「―――…なぁっ…!」
キミの笑顔に
「一目惚れした。僕のお嫁さんになって」
「…な、何言ってんだアンタ!
だ…だ、大体、男同士は………」
「そんなの関係ない。あ、でもキミが堂々と披露宴したいって言うんなら、獄界の規則をかえれば………」
「んなこと出来るワケないだろーが!魔王じゃあるまいし!」
「………僕、その魔王だけど…?」
「………はぁぁぁあ!?」
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