右手と左手であの人の首を絞める。
ゆっくりと爪が皮膚に食い込んで、ギリギリと骨の軋む音がする。
まどろむ意識のあの人は、ぽつりと一言零して動かなくなった。
「………起きろ、プラチナ」
トン、と肩を叩かれて、プラチナの意識が浮上する。
「………おにい、さま…?」
「オレ以外の誰に見える?」
寝ぼけてるのか、と言いながら、ゴールドはカップに紅茶を注いだ。
スッと差し出されたアーリーモーニングティーに口をつけながら、数日間出張で屋敷に居ない父親に感謝する。
「あぁ、そうだプラチナ。
これ、この前イエロー先輩…あ、カントーの図鑑所有者な。
イエロー先輩と出かけた時に買ったヤツなんだけど……」
ずき、と胸に違和感を覚える。
「(…お兄様が知らないヒトと……)」
ゴールドはジョウトに住んでいるワケで、シンオウに住んでいるプラチナが知らないことだってたくさんある。
ましてや、友人関係なんて。
それでも、たまに思うことがある。
「(私だけを見ていて)」
「(私以外を見る瞳が憎い)」
「(私だけを映す瞳が好き)」
「(私以外を呼ぶ声なんていらない)」
「(私だけに囁く言葉が……)」
「……プラチナ」
振り向けば、
『……プラチナ』
夢に見た光景と重なりそうになって、プラチナはブンブンと首を振った。
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