ふわり、と鮮やかな桃色の花が風に揺れる4月。
とある私立高校の正門の前に、彼は居た。
ブレザーの左腕の袖に、『生徒会』と書かれた腕章が安全ピンでとめられている。
漆黒の髪を靡かせて、浅朱の瞳が門をくぐって行く新入生たちを映す。
「……お前、もう来てたのか?」
ふと、後ろを振り返れば、左袖に同じく腕章、しかし『風紀』と書かれたものをつけている深緑の瞳。
「………緑」
名を呼べば、よぉ、と軽い返事が返ってくる。
そのまま歩み寄ってきて、緑は口を開いた。
「赤、お前もうアイツを待ってんのか?
アイツのことだから、ギリギリに来そうだけど」
「………わかんないでしょ?」
軽く睨んで、赤は緑に「何しに来たの」と呟く。
その視線を受け流して、緑は小さく笑った。
「…俺だってアイツを待つために此処に来たんだよ」
「……………」
「何その迷惑そうな表情」
「……まぁいいけど」
はぁ、と溜息をつきながら、赤は門に縋る。
このマイペース(といえば聞こえがいいが、正直にいえば俺様で自己中)な赤が、ある一人の新入生を待っているのだから驚きだ。
今日の職員室は『生徒会長が推薦してきた新入生』の話で盛り上がっただろう。
ふと、そこで正門前通り、曲がり角の向こうから、黄金の瞳を深緑の瞳が捉えた。
赤の肩を叩いて、睨まれながらも曲がり角に指をさせば、
「ちょっと、ゴールドに指ささないで」
と、緑は指を反対方向に曲げられた。
緑が唸っている間に赤は彼に駆け寄って抱き着く。
まだ真新しい制服が、彼が新入生だということを教えてくれた。
新入生に告ぐ!
「ちょっ、赤、はなせってば」
「ヤだよ。春休みは引っ越しの準備で忙しくて会えなかったじゃない」
「だから、今日からは赤の住んでるマンションの隣室に住むだろ」
「…そうだけどさ……」
「赤ー、ゴールドー、イチャつくのは勝手だがそろそろ行かないとヤバイぜー」
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