「………あれ?」
ある日の昼下がり、マサラタウンのオーキド研究所で、クリスタルは同じ図鑑所有者のゴールド、シルバーと資料整理をしていた。
黙々と作業を続けていた3人は(たまにゴールドがシルバーに紙飛行機を飛ばしたり、それに反発したシルバーがゴールドに輪ゴムを飛ばしたりしながら)、一時休憩をとる。
各自がアイスコーヒーを口にしながら、一息をついていた。
そして、冒頭のクリスタルの呟きに戻る。
「………どうかしたか?」
シルバーがクリスタルに問い掛ける。
それに続いて、ゴールドも顔をクリスタルに向けた。
「シンオウのポケモンデータが幾つか送られてないのよ…。
これは……ナギサシティ周辺のポケモンの生息地のデータがないわ」
調べ直してもらわないと………。と溜息をついたクリスタルを見ながら、ゴールドはポケギアを手に取った。
「………ナギサシティ周辺だよな?」
聞き返したゴールドの言葉に、?を浮かべながらも、クリスタルは「えぇ、」と返した。
『……もしもし?』
ポケギアから聴こえてきたのは、低めな男の声。
「あー、もしもし?ゴールドっス。
今ジム大丈夫っスか、デンジさん」
「デンジ……?」
シルバーが訝しみを込めて呟いた。
そう、その名は、シンオウの最強ジムリーダーの名前。
『全然大丈夫だ。何なら、挑戦者来たら全員追い返す』
「それはやめましょうか」
『ははは、その言葉、過去の緑にも言ってやれ。
で、どうした?』
「ナギサシティ周辺のポケモンのデータが欲しいんだけどさ、どうにかならないかな?」
出来ればすぐ、と付け加えて、ゴールドはクリスタルに視線を移す。
『この辺りの、か…?
そうだな…急ぎなら、俺の独自のポケモンデータがあるぞ』
「まじっスか。
とりあえず、ナギサシティ周辺のポケモンの生息地のデータが欲しいんスけど」
『あぁ、生息地なら完璧だ。で、データはどうしたらいい?』
「カントーのマサラタウン、オーキド研究所にお願いします」
『………緑のお祖父さんの所か。
そんなに急ぐのか?』
「急げるだけ急いでほしい」
『そうか、なら、俺が持って行こう。
夕方くらいには着くだろう』
ついでにバトルしよう、と続けたデンジに、ゴールドは手加減無しっスよ、と答えた。
とりあえずちょっと待て。
話についていけないクリスタルとシルバーが、夕方に金髪の青年に出逢ったのかは、また別の話。
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